メキシコ食肉業界、政府の家畜移動規制に反発、スクリューワームハエ症流行
スクリューワームハエは熱帯および亜熱帯地域に広く分布しており、中南米、アフリカ、アジアの一部地域で発生が確認されている。
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メキシコ食肉産業協会(AMEG)が政府の家畜移動規制に反発している。
AMEGは29日、スクリューワームハエ症(蠅蛆症)をめぐって米国との緊張が高まる中、シェインバウム政権による家畜移動制限を非難した。
AMEGはメキシコ国内における食肉生産、とりわけ牛肉の肥育業者を中心とした業界団体である。1995年に設立され、加盟企業はメキシコ全国に広がっている。主な目的は、メキシコの食肉産業の近代化・効率化を促進し、国内外の市場における競争力を高めることにある。
AMEGは声明の中で、「南部地域から北部への家畜移動制限は2024年に1920億ドルもの利益を生み出した産業の存続を脅かす」と指摘した。
またAMEGは「最近の措置は...食肉生産セクターのサプライチェーンを危険に晒す」と述べたが、措置の詳細は明らかにしなかった。
さらに、家畜を死に至らしめるスクリューワームを根絶する唯一の方法は、不妊処理したハエを放して野生個体群の交配を減少させることだと述べた。
スクリューワームハエ症は寄生性のハエであるスクリューワーム(主に新世界スクリューワームと旧世界スクリューワーム)の幼虫によって引き起こされる感染症である。このハエは哺乳類や人間の生きた組織に産卵し、孵化した幼虫が皮膚や粘膜に侵入して組織を食い荒らすことによって病変が進行する。一般的な蠅蛆症では死んだ組織にウジが寄生する場合が多いが、スクリューワームの場合は生きた健康組織を侵食するため、特に危険性が高い。
ロイター通信によると、メキシコ農務省は寄生虫駆除薬イベルメクチンを国際獣疫事務局(WOAH)職員の監督下で、「牛の移動の72時間前にこれを投与しなければならない」としている。
ロリンズ(Brooke Rollins)農務長官は先週、メキシコ国境から100キロほどしか離れていない北部ヌエボレオン州でスクリューワームの感染が確認されたことについて、「メキシコ政府が牛の移動を制限せず、ハエの管理を怠ったことが原因だ」と非難していた。
スクリューワームハエは熱帯および亜熱帯地域に広く分布しており、中南米、アフリカ、アジアの一部地域で発生が確認されている。かつては米国南部にも生息していたが、1950年代以降、ステリール昆虫放飼法(SIT)を用いた根絶プログラムが成功し、現在では一部の地域を除き発生が抑えられている。しかし、再侵入のリスクが常にあり、国際的な監視体制が重要とされている。
本症の感染経路は、傷口や粘膜など体表の開口部への卵の産み付けである。ハエの雌はわずか数時間で数百個の卵を産みつけることができ、24時間以内に幼虫が孵化する。孵化した幼虫はすぐに組織に侵入し、深く掘り進みながら生きた細胞を摂食する。このため、感染した動物や人間には激しい痛みと炎症、組織の壊死、二次感染などが生じる。特に治療が遅れた場合、死に至ることもある。
家畜においては、スクリューワームハエ症は深刻な経済的損失をもたらす。特に牛や羊などの大型動物が被害を受けやすく、感染により乳生産量や体重が減少し、皮膚や肉の品質も大きく損なわれる。また、感染拡大を防ぐためには、殺虫剤の散布や傷口の消毒、衛生管理の徹底など、多くのコストがかかる。
治療には、イベルメクチンなどの駆虫薬の投与や、感染部位からの幼虫の除去、抗生物質による二次感染の予防が含まれる。初期段階での発見と迅速な対応が重要であり、特に動物の管理者には日常的な健康観察が求められる。
予防対策としては、SITによる成虫の繁殖抑制、衛生的な飼育環境の維持、傷の早期処置などが効果的である。国際的には、国際獣疫事務局(WOAH)などの組織が監視と防除の支援を行っており、域内の防疫体制の強化が進められている。
人間に感染するケースは稀ではあるが、発展途上国や医療アクセスが限られた地域では報告例も多く、特に高齢者、乳幼児、寝たきりの患者などがリスクにさらされやすい。都市部でも、ゴミの不適切な処理や不衛生な環境が感染リスクを高める要因となっている。