◎チアパス州ではシナロア・カルテルとハリスコ新世代による縄張り争いが激化しており、陸軍と警察も対応に苦慮している。
メキシコ南部チアパス州にある世界遺産「古代マヤ文明」の都市遺跡の一部が麻薬カルテルの支配下に置かれ、立ち入りできない状態になっている。現地メディアが27日に報じた。
それによると、隣国グアテマラと国境を接するエリアでカルテルやギャング間抗争が激化し、遺跡に通じる道などに検問所が設置されたという。
政府はこの報道を否定しているが、AP通信はチアパス州で活動するNGOなどの話を引用し、「世界最大の麻薬組織シナロア・カルテル(Sinaloa Cartel)やハリスコ新世代(Jalisco New Generation)の検問所にはロケットランチャーや機関銃を持つ戦闘員が配備されている」と報じた。
マヤ遺跡のひとつであるボナンパクは完全に封鎖されたと伝えられている。
別の遺跡に続く道にはシナロア・カルテルの検問所が複数設置され、通過する際に身分証明書の提示を求められ、携帯電話を没収されることもあるという。
ククルカンピラミッドに続く道路には地権者がバリケードを設置。カルテルやギャングに対抗する措置とみられる。
チアパス州ではシナロア・カルテルとハリスコ新世代による縄張り争いが激化しており、陸軍と警察も対応に苦慮している。
両カルテルは麻薬密売と人身売買に欠かせないルートをめぐって対立。ライバルの動きを察知するために、マヤ遺跡を含む広い範囲に検問所を設置し、地雷や即席爆発装置(IED)が設置されたエリアも存在する。
これまでのところ、観光客に被害は出ておらず、政府も安全だと主張しているが、多くの旅行会社がマヤ遺跡ツアーを中止し、ガイドも活動を停止している。