◎シナロア・カルテルとハリスコ新世代はチアパス州を含む南部の広い範囲で麻薬密売と人身売買ルートの支配権を争っている。
メキシコのオブラドール(Andrés Manuel López Obrador)大統領は10日、グアテマラと国境を接する南部チアパス州でギャング間抗争が激化し、住民約4200人が避難を余儀なくされたと明らかにした。
それによると、当局はグアテマラ国境近くに臨時の避難所を開設したという。
麻薬カルテルとみられる正体不明の武装ギャングは先週、チアパス州郊外の町に押し入り、複数の家屋を焼き払った。
この地域では世界最大の麻薬組織「シナロア・カルテル(Sinaloa Cartel)」と同国№2の「ハリスコ新世代(Jalisco New Generation)」が支配権を争っている。
地元メディアによると、シナロア系の武装ギャングが対立する組織に攻撃を仕掛けたとみられる。当局はこれまでに2人の死亡を確認している。
AP通信の取材に応じた避難者の男性は、「軍隊と州警察が町を封鎖し、許可が出るまで外出しないでと緊急放送を流した」と語った。「外で銃声と爆発音が聞こえた時はもうダメだと思いました...」
州政府が公開した写真にはリュックサックやショルダーバックを持って逃げ惑う人々の姿が映っていた。
オブラドール氏はこのギャング間抗争について、「農家の土地をめぐる争いが激化したものであり、カルテルが関与しているかどうかは分からない」という見方を示した。
グアテマラ国境近くの移民キャンプに逃げ込んだ家族はAPに、「陸軍が到着するまでの3日間、怖くて一歩も外に出れなかった」と語った。
一方、チアパス州に拠点を置く人権団体はこの抗争に「主要カルテルとは一線を画すグループが関与している」と指摘している。
それによると、このグループは地元の若者で構成され、麻薬の密売や人身売買を生業としている。
この抗争で少なくとも17棟の建物が焼失、2人の遺体が収容された。
報道によると、犯行声明を出した組織は確認されていない。犠牲者の身元も不明である。
オブラドール氏は「避難所に水や食料などの物資を供給している」と述べた。
またオブラドール氏は「陸軍と警察が暴力を抑えた」と主張。「政府は現在、避難者を町に戻すべく、関係機関と連携して対応に当たっている」と述べた。
シナロア・カルテルとハリスコ新世代はチアパス州を含む南部の広い範囲で麻薬密売と人身売買ルートの支配権を争っている。