◎米国と国境を接する町は麻薬カルテルが最重要視するエリアのひとつである。
メキシコ、北部チワワ州、軍のパトロール部隊(Getty Images/AFP通信)

メキシコの警察当局は12日、北部チワワ州シウダー・フアレスの路上でギャングとみられる男たちが銃を乱射し、ラジオ局の職員4人を含む少なくとも9人を殺害したと発表した。

シウダー・フアレスはメキシコで最も治安が悪い都市と呼ばれ、シナロアカルテル(Sinaloa Cartel)の支援を受けるギャングを含む複数の武装集団が支配権を争っている。

事件の前日、シウダー・フアレスの刑務所でギャング間抗争が勃発し、受刑者2人が死亡、20人が負傷していた。警察は11日の声明で3人が死亡したと報告していたが、その後2人に訂正した。

12日の銃乱射は刑務所で発生した事件の報復とみられる。警察はギャングとみられる男10人を逮捕した。

AP通信によると、この男たちはシウダー・フアレスの刑務所近くから市内に移動し、小売店や企業に火を放ち、銃を乱射したという。

オブラドール(Andres Manuel Lopez Obrador)大統領は12日、事件を「ギャングの復讐」と呼び、罪のない民間人が巻き込まれたと悲しみを表明した。「2つのギャングは勝手に衝突し、何の関係もない民間人を殺したのです」

州警察の報道によると、ラジオ局の前で生中継の準備をしていたクルー4人が射殺されたという。

チワワ州の検察庁は声明で、「コンビニに対する銃撃で少年1人が死亡、ガソリンスタンドでは女性2人、さらに別の場所で男性2人が射殺された」と述べている。

逮捕された10人の身元は明らかにされていないが、麻薬カルテルとつながりのあるギャングの構成員と思われる。

ギャングが市民を標的にすることは珍しくない。北東部タマウリパス州の国境の町レイノサで昨年6月に発生した事件では市民14人がギャングに射殺された。この事件では軍が動員され、容疑者4人がその場で射殺されている。

米国と国境を接する町は麻薬カルテルが最重要視するエリアのひとつである。シウダー・フアレスはその中でも特に治安が悪い。

米国への麻薬密輸は数億ドルの利益を生むため、シナロアカルテルや№2の「ハリスコ新世代(Jalisco New Generation)」とつながりのあるギャングが支配権をめぐり、血みどろの戦いを繰り広げている。

メキシコはシリアやアフガニスタンなどの紛争地を除いて、世界で最も危険な国のひとつとされ、2000年代中頃に本格化した麻薬戦争の犠牲者は35万~40万人と推定されている。

メキシコ麻薬戦争を調査している団体によると、シウダー・フアレスのここ数年の殺人事件数は10年前に比べると大幅に減少しているという。2021年は約1400件、2010年は3600件を超えていた。

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