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メキシコ、USMCA見直しに先立ち協議プロセス開始

USMCAは北米の3カ国が経済関係を強化するために締結した自由貿易協定であり、2020年7月1日に発効した。
メキシコから米国に向かう貨物列車(Getty Images/AFP通信)

メキシコ政府は17日、米国・メキシコ・カナダ貿易協定(USMCA)の運用に関する情報を収集するため、協議プロセスを開始したと明らかにした。

エブラルド(Marcelo Ebrard)経済相は自身のSNSに動画を投稿。「この協議と評価は貿易協定の見直しに先立って実施される」と述べた。

USMCAは定期的に3カ国で見直しを行うことを義務付けている。

協定の見直しは2026年初頭に予定されているが、メキシコ当局は今年中に協議が開始され、見直しによってメキシコと米国の貿易関係に関する不確実性が解消されることに期待を表明している。

シェインバウム(Claudia Sheinbaum)大統領は17日の定例会見で、3カ国が同時にUSMCAの協議開始を発表することで合意したと語った。

またシェインバウム氏は18日にカナダのカーニー(Mark Carney)首相と会談する予定であることを確認。「貿易協定と二国間関係に関する問題について話し合う」と付け加えた。

USMCAは北米の3カ国が経済関係を強化するために締結した自由貿易協定であり、2020年7月1日に発効した。これは1994年から続いていた北米自由貿易協定(NAFTA)を改訂・更新したもので、トランプ政権の要求により再交渉が行われ、より現代的な経済課題に対応する内容へと刷新された。USMCAは物品やサービスの自由な流通を促進するだけでなく、デジタル経済、労働、環境といった新しい分野にも規律を及ぼしている点が特徴である。

まず、農業分野ではカナダの乳製品市場の一部開放が盛り込まれ、米国農家の輸出機会が拡大した。また、自動車産業では原産地規則が強化され、完成車の75%以上が北米で生産された部品を使用することが義務付けられた。さらに、一定割合の部品は時給16ドル以上の労働者によって製造される必要があり、これはメキシコの低賃金労働への依存を減らし、米国やカナダの労働者を保護する狙いがある。

次に、デジタル貿易の分野では、電子商取引に関する包括的な規定が導入された。データの越境移転を保障し、関税を課さない方針を明確にすることで、デジタル経済の発展を促す仕組みが整えられている。これはNAFTAには存在しなかった新しい要素であり、21世紀型の貿易協定としての性格を象徴している。

また、知的財産権の保護も強化され、著作権の保護期間が著作者の死後70年まで延長されるなど、米国の基準に近づけられた。ただし、医薬品のデータ保護期間については、当初米国が求めていた延長案は取り下げられ、各国の妥協点が反映された形となっている。

さらに、労働と環境の章が独立して設けられ、労働者の権利保護や環境規制の遵守が義務化された。特にメキシコは労働組合の自由や労働環境改善を実行するよう求められており、協定遵守のための紛争解決手続きも整備されている。この点は、単なる自由貿易協定にとどまらず、社会的な公正を担保する枠組みとしての意味を持っている。

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