メキシコ、アジア諸国の輸入関税引き上げへ 2026年1月から
この措置は議会が12月初旬に承認したもので、自由貿易協定を結んでいない国々からの輸入品に対し、幅広い製品で関税率を最大35%まで引き上げる内容となっている。
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メキシコ政府は12月30日、2026年1月8日から中国をはじめとするアジア諸国からの輸入品に対する関税を引き上げると発表した。この措置は議会が12月初旬に承認したもので、自由貿易協定を結んでいない国々からの輸入品に対し、幅広い製品で関税率を最大35%まで引き上げる内容となっている。対象国としては中国、インド、韓国、タイ、インドネシアなどが含まれる見込みであり、メキシコの国内産業保護策として位置づけられている。
今回の関税引き上げは、特に中国製品に大きな影響を及ぼすとみられている。関税対象となる製品群は自動車や自動車部品、繊維製品、プラスチック製品、鋼鉄製品など多岐にわたり、輸入コストの上昇を通じて国内企業の競争力を高める狙いがある。また、メキシコ政府はこの措置により約37億6000万ドルの追加歳入が期待できるとしている。
政府はこの関税政策が国内の生産活動を刺激し、再工業化を促進すると強調している。特に自動車産業など、メキシコ経済の基幹分野においては、輸入品依存度の低下と国内生産の拡大が課題となっていた。政府は関税引き上げにより雇用の維持・創出が図られるとともに、国際的な貿易バランスの改善にも寄与すると説明している。
ただし、関税引き上げを巡っては、中国側が強い反発を示している。中国外務省と商務省は声明で、メキシコの措置に対して注意深い検討を求め、「一方的で保護主義的な行為は経済グローバル化に逆行し、両国の利益に反する」と警告した。また必要に応じて自国の正当な権益を守る措置を取る可能性があるとした。
メキシコ国内では産業界からも懸念の声が上がっている。一部の業界団体は関税引き上げによる原材料や中間財のコスト増が企業収益を圧迫し、結果的に消費者価格の上昇につながるとの見方を示している。また、輸出志向の企業にとってはサプライチェーンの再構築が必要になる可能性も指摘されている。
一方で、米国との関係を意識した動きとの見方もある。アナリストは、メキシコが関税政策を通じて米国市場との調和を図る狙いがあると指摘しており、2026年に予定されるUSMCA(米・メキシコ・カナダ協定)の見直しを意識した戦略的な動きだと分析する声もある。米国が中国製品への関税強化を進める中、メキシコも同様の動きを取ることで対中貿易の圧力を共有する可能性があると見られている。
関税引き上げは来年早々に発効し、対象となる多くの製品に新税率が適用される見込みだ。メキシコ政府は影響を最小限に抑えるため、企業や消費者への情報提供を強化するとともに、貿易環境の変化に対応するための支援策を検討しているが、その効果とリスクのバランスが今後の焦点となる。
