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メキシコ、アジア諸国からの輸入品に関税、最大50%

対象となるのはメキシコと自由貿易協定を結んでいない国々。中国、インド、韓国、タイ、インドネシアなどだ。
2025年4月22日/メキシコ、西部マンサニージョの港湾施設(ロイター通信)

メキシコ議会上院は10日、来年1月から中国などアジア諸国からの輸入品に対して最大50%の関税を課す法案を可決した。

採決の結果、法案は賛成76ー反対5(棄権35票)で可決された。

この新たな関税は1400を超える品目に適用され、自動車、自動車部品、繊維・衣類、プラスチック製品、鉄鋼などが対象となる。多くの品目は最大で35%の関税が課され、一部品目で上限の50%に達する見通しである。

対象となるのはメキシコと自由貿易協定を結んでいない国々。中国、インド、韓国、タイ、インドネシアなどだ。これらの国々からの輸入品が引き上げの対象となる。

この措置の狙いについて、政府与党は国内産業の保護と雇用維持と説明している。与党・国家再生運動(MORENA)のある上院議員は、「この関税はメキシコ製品をグローバルなサプライチェーンの中で強くし、重要な産業部門の雇用を守るもの」と主張。また、歳入増加による財政赤字の削減も大きな目的のひとつとされ、来年は約37.6億ドルの追加税収が見込まれている。

だが、一方で批判の声も根強い。対象となる輸入品を扱う業界や流通・小売業からは、コストの上昇が避けられず、消費者に影響が及ぶとの懸念が出ている。また、海外の輸出国、特に中国政府からは強い反発があり、「貿易の公正性を損なう」との批判もある。

下院はすで法案を可決済み。上院で一部修正された。原案にあった厳しい関税条件をやや軟化させた改定バージョンで、輸入品のうちおよそ3分の2の税率が抑えられた。

今回の関税強化は来年予定されている米国・メキシコ・カナダ貿易協定(USMCA)の再交渉を見据えた政策として分析されている。専門家らは、メキシコが米国との貿易・経済関係を重視し、中国などからの安価な輸入品に対して関税で歯止めをかける狙いがあると指摘する。

政府は「ただ歳入を増やす手段ではなく、国全体の経済・貿易政策を長期的に導くものだ」と説明しており、今後この税収をどのように国内産業支援や雇用確保に振り向けるのか、透明性の確保が求められている。

今回の関税措置はメキシコ国内の産業界や消費者だけでなく、輸出元のアジア諸国や国際的なサプライチェーンにも大きな波紋を広げる可能性がある。輸入量の動向、価格への転嫁の度合い、さらにはUSMCA再交渉に注目が集まる。

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