メキシコ中央銀行「経済は堅調で回復力ある」国内リスク高まる中
中銀はメキシコの銀行セクターが高い流動性と資本の余裕を維持しており、規制上の最低要件を大きく上回っている点を強調。加えて、ストレステストの結果も「銀行は不利な経済状況に耐えられる」との判断を示した。
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メキシコ中央銀行は10日に公表した報告書において、同国経済は「依然として堅固かつしなやか」であると評価した。だが同時に、国内の金融リスクが高まっているとの警告も示した。
中銀はメキシコの銀行セクターが高い流動性と資本の余裕を維持しており、規制上の最低要件を大きく上回っている点を強調。加えて、ストレステストの結果も「銀行は不利な経済状況に耐えられる」との判断を示した。
しかし報告書では、国内リスクの顕著な高まりを指摘。特に「経済全体に対する見通しの悪化」「予想以上のインフレの継続」「公的財政状況の悪化」が主な懸念材料とされた。ロドリゲス(Victoria Rodríguez Ceja)総裁はこれらを踏まえ「前回調査と比べ、内部金融リスクはすべて上昇した」と述べた。
中銀は最近、2025年の経済成長見通しをほぼゼロに引き下げた。これは世界貿易の停滞や国際的な経済環境の不透明さに起因する。また、短期的なインフレ率見通しも修正され、2025年から2026年初頭にかけて上振れの可能性を示した。
物価動向に関しては、11月の消費者物価指数(CPI)が前年同月比で3.8%上昇し、市場予想をわずかに上回った。これは中銀の目標としている「3%±1ポイント」の上限近辺であり、インフレへの警戒感が依然として残る。
一方で、中銀は11月に政策金利を0.25%引き下げ、7.25%としている。これは最近の緩和サイクルの一環であり、景気状況と物価動向のあいだでバランスを取ろうとする姿勢の表れだ。だが、ヒース(Jonathan Heath)副総裁が長期的なインフレ率の見通しに対して慎重な姿勢を示すなど、市場では今後の金融政策の難しさも指摘されている。
また、報告書ではマネーロンダリング(資金洗浄)対策に関する言及もあった。3つの金融機関が関与したとされる事件について「システミック(銀行システム全体への)リスクには至らない」との見解を示しつつ、銀行当局による監視体制や予防措置の強化を進めているという。
こうした多面的な分析を踏まえると、メキシコ経済は現時点で一定の耐性を保ってはいるものの、インフレ、公的財政、国際経済の不透明感といった内外リスクが重なっており、「安定」と「警戒」が同居する不透明な局面にあるといえる。今後、景気の先行き、金融政策、物価動向のいずれにも注意が必要だ。
