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メキシコ、行方不明者13万人のうち4万人が生存している可能性


今回の分析は国家の行方不明者登録データと、税務記録や婚姻登録、出生証明などの政府データベースを照合する形で行われた。
2022年8月30日/メキシコ、首都メキシコシティ、「強制失踪の被害者のための国際デー」のイベント、行方不明者の写真を見る女性(Eduardo Verdugo/AP通信)

メキシコ政府は27日、国内で行方不明となっている約13万人のうち、約4万人が生存している可能性があるとの調査結果を明らかにした。長年続く失踪問題の実態把握に向けた大規模なデータ精査の結果であり、同国の人権問題に新たな論点を投げかけている。

今回の分析は国家の行方不明者登録データと、税務記録や婚姻登録、出生証明などの政府データベースを照合する形で行われた。その結果、約4万3000人の記録に何らかの行政活動の痕跡が確認され、生存している可能性があると判断された。

ただし、このうち実際に所在や生存が確認されたのは約5200人にとどまり、大半は行方が分かっていない。記録上は生存の兆候があるものの、現実の居場所や状況までは把握できていないケースが多いという。

調査では、行方不明者データの不備も浮き彫りとなった。全体の約36%の記録で重要な情報が欠落し、重複登録や未確認のまま登録されたケースも多い。さらに、多くの事案で政府データベース上の活動履歴が全く確認できず、捜査が進んでいない実態も明らかになった。

メキシコでは2006年に政府が麻薬カルテルとの対決を本格化させて以降、失踪者の数が急増した。カルテルや治安部隊の関与も指摘される中、失踪は深刻な社会問題となり、多くの家族が行方不明となった親族を探し続けている。

政府は今回の結果について、失踪者数を減らすためのものではなく、記録の正確性を高める取り組みの一環だと強調している。該当者の名前は登録から削除せず、確認が進んだ場合には分類を更新する方針だ。また新たな制度では、失踪届の登録時に最低限の情報提出を義務付け、すべての案件について検察が正式に捜査ファイルを作成することが求められる。

しかし、被害者家族や人権団体からは懐疑的な声も上がっている。これまでも政府が統計の見直しを進める中で、「実態を過小評価している」との批判が出ており、今回の発表も同様に受け止められる恐れがある。失踪問題の根本的な解決には、捜査の強化や責任追及が不可欠とされている。

メキシコにおける失踪は単なる統計上の問題ではなく、暴力と無処罰が続く社会構造を反映した深刻な人権危機である。今回のデータ見直しは実態解明に向けた一歩と位置付けられるが、なお多くの人々の行方は分からないままで、家族の苦しみは続いている。今後、情報の精度向上とともに、実効的な捜索と司法対応がどこまで進むかが問われている。

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