◎メキシコはシリアやアフガンなどの紛争地を除いて、世界で最も危険な国のひとつであり、麻薬戦争の犠牲者は35万~40万人、それに巻き込まれて行方不明になった人は10万人以上と推定されている。
メキシコ、シナロア州クリアカン近郊、ギャング間抗争が発生した通り(Getty Images)

メキシコ北西部シナロア州クリアカンで麻薬カルテル抗争が激化し、市内の全学校が休校に追い込まれ、祝日のイベントも中止された。現地メディアが12日に報じた。

それによると、世界最大の麻薬組織シナロア・カルテルの派閥間の争いが9日頃から激化し、各地で爆発や銃撃戦が確認されているという。

オブラドール(Andrés Manuel López Obrador)大統領は陸軍、州兵、警察がこの地域の安全を確保していると主張しているが、地元テレビ局は住宅地でものすごい爆発音と機関銃を乱射したような激しい銃声を何度も聞いたと伝えている。

地元住民もSNSに複数の動画を投稿。マスクをつけたカルテルもしくはギャングの戦闘員とみられる男たちが銃を持って街中を走り回る様子が映っていた。

陸軍の特殊部隊がこの地域に武装ヘリを展開し、警戒に当たっているものの、恐怖が収まる気配は見えない。

シナロア州知事は7月下旬に米国でカルテルの幹部2人が逮捕されて以来、派閥間の争いが続いていると報告している。

同州知事は12日、SNSに声明を投稿。「治安部隊がいくつかの暴力行為を阻止し、今この瞬間も市民の命を守るために市内をパトロールしている」と述べた。

それでも、安全上の理由から、9月15~16日にかけての祝日に予定されていたイベントはすべて中止となり、学校も閉鎖された。

州教育委員会は声明で、「州内の学校に問い合わせたところ、12日に登校した生徒はほとんどおらず、各校は保護者に生徒を外出させないよう強く促している」と述べた。

シナロア州知事は市民を守るために十分な警備態勢を敷いていると主張したが、クリアカンの住民の見方はまったく異なるようだ。

地元テレビ局で働く男性はAP通信の取材に対し、「政府は何も管理できておらず、ギャングは野放し状態で、好き放題している」と語った。

その一例として、10日、クリアカン市内で正体不明の武装集団が15台のトラックを乗り回し、空に向けて銃を乱射。警察は現れず、集団はどこかに走り去ったという。

シナロア州を含む北部の米国国境地域ではシナロア・カルテルや麻薬組織「ハリスコ新世代(Jalisco New Generation)」を含む複数の麻薬カルテルやギャングが何年も前から血生臭い縄張り争いを繰り広げている。

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