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自警団が闇金業者5人を処刑、警察が捜査 メキシコ南部

メキシコにおける「自警団」は、主に麻薬カルテルによる暴力や犯罪に対抗するために地域住民によって組織された武装集団である。
メキシコ、南部オアハカ州(Getty Images)

メキシコ南部オアハカ州の郊外で焼け焦げた5人の遺体が見つかり、警察が捜査している。地元検察が1日、明らかにした。

それによると、5人は闇金業者とみられ、女性から金を回収するためにオアハカ州郊外の集落を訪れ、行方不明になったという。

州当局と国家警備隊が周辺を捜索し、焼け焦げた車を発見。5人の遺体を収容した。

5人は9月29~30日に「処刑」されたとみられる。

警察は「自警団」の犯行とみて捜査している。

メキシコでこのような事件は珍しくなく、警察の手が届かない地方でよく発生する。

3月にはオアハカ州の別の町で、道化師として働いていた男性が児童虐待の疑いで告発された後、自警団に捕まり、焼き殺された。

南部ゲレロ州では昨年、少女の誘拐・殺害に関与した疑いで告発された女性が自警団に処刑されている。

メキシコにおける「自警団(スペイン語で“autodefensas”)」は、主に麻薬カルテルによる暴力や犯罪に対抗するために地域住民によって組織された武装集団である。

自警団は2010年代初頭、ミチョアカン州やゲレロ州などで急速に台頭した。背景には、治安機関の腐敗や機能不全があり、住民たちは自らの生命と財産を守るために武器を取るしかなかったという事情がある。

当初、自警団は住民の支持を集め、麻薬組織に支配されていた地域からカルテルを排除するなど一定の成果を上げた。しかし、時間の経過とともに問題が顕在化した。自警団の一部が法の枠を超え、自らの正義を執行するようになり、犯罪者と見なした人物を裁判なしで拘束・拷問・殺害する「超法規的処刑」が行われる事例が相次いだ。

このような超法規的処刑は、被害者が実際に犯罪に関与していたかどうかにかかわらず行われることがあり、人権団体や国際社会から強い批判を受けている。中には無実の住民が、誤った情報や個人的な報復によって標的にされ命を落とすケースも報告されている。また、自警団の一部が元カルテルの構成員や他の犯罪者によって乗っ取られ、事実上別の武装勢力として活動している事例も存在する。

政府は自警団を正規の治安部隊に編入するなどの試みを行ってきたが、現地では依然として独立した武装集団として活動を続ける例が多く、治安悪化の一因となっている。また、自警団と警察・軍の間での衝突も発生しており、暴力の連鎖が止まらない状況が続いている。

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