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治安部隊の隊員が同僚3人を殺害、逮捕 メキシコ・ミチョアカン州

地元当局や州政府はこのような軍・治安部隊内部での事件が地域の治安改善の努力を損なうとして深刻に受け止めている。
メキシコ、中西部ミチョアカン州ウルアパン(AP通信)

メキシコ中西部ミチョアカン州で治安部隊の隊員が駐屯地内で同僚の隊員3人を殺害する事件が発生した。現地メディアが8日に報じた。

それによると、隊員は駐屯地内で逮捕されたという。

ミチョアカン州では6日、警察署前で車が爆発し、少なくとも5人が死亡、12人が負傷する事件が発生したばかり。中央政府は同州内で市長暗殺や銃撃・爆破事件など、暴力が激化していることを受け、治安部隊の強化を図ったばかりであった。

この増強にょり、州内に恒常的に駐留していた約4300人に加え、隣接州から4000人、さらに今回新たに2000人の部隊が追加派遣されていた。

このため、今回の部隊内の銃撃は治安強化策にもかかわらず、組織としての統制や士気に重大な亀裂がある可能性を浮き彫りにしている。

地元当局や州政府はこのような軍・治安部隊内部での事件が地域の治安改善の努力を損なうとして深刻に受け止めている。特に、今年に入ってから州内では麻薬カルテルによる暗殺や爆破事件が多発しており、治安改善のために投入された人員が、逆に内部犯罪の温床となる恐れがある。

今回の事件の動機や背景については、警察が内部の人間関係や精神状態、あるいはカルテルとの関係性など、あらゆる可能性を考慮し、慎重に捜査を進めている。

だが、仮に単独犯であっても、同州の治安政策の有効性や、部隊の管理体制に対する信頼は大きく損なわれるだろう。

ミチョアカン州はメキシコで最も危険な州のひとつであり、その大半が世界最大の麻薬組織シナロア・カルテルとつながりのあるギャングの支配下に置かれている。

ミチョアカン州では最近、シナロア・カルテルのライバルであるハリスコ新世代や湾岸カルテルも勢力を拡大していると伝えられている。そうした中で、国家による治安強化とともに、軍・警察の秩序維持と信頼回復が今後さらに求められている。

中央政府だけでなく国際社会もこの事件を注視している。背景にカルテルの影響や内部統制の問題があるのか、それとも個人的な問題か、捜査の結果によって、ミチョアカン州の治安維持能力と、メキシコ政府の対麻薬・治安政策の信頼性が改めて問われる可能性が高い。

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