エルサルバドル記者協会、政府の圧力受け国外移転へ
5月に成立した外国の代理人法は、NGOがエルサルバドル国外から受け取る資金に課税(30%)し、外国代理人としての登録を義務付ける。
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エルサルバドル人ジャーナリスト協会(APES)は1日、同国で批判的な声を抑圧する手段と見なされている「外国の代理人法」が今年5月に成立したことを受け、法的な拠点を国外に移す方針を明らかにした。
APESは声明で、「ジャーナリストの権利と報道の自由を守り続けるためには他国への移転が必要だ」と表明。移転先は明かさなかった。APESは先月、事務所閉鎖計画を発表していた。
APESは「制限や圧力なしに活動する必要性を評価した末の苦渋の決断だ」と述べた。
ブケレ(Nayib Bukele)大統領は再選を果たして以来、NGOやメディアへの圧力を強化している。
5月に成立した外国の代理人法は、NGOがエルサルバドル国外から受け取る資金に課税(30%)し、外国代理人としての登録を義務付ける。ブケレ氏は自らの政策を批判するNGOやメディアをギャングの手下と非難している。
最新の世論調査によると、ブケレ氏の支持率は90%前後で推移している。有権者の大多数がブケレ政権のギャング掃討作戦と治安の改善を高く評価している。
ブケレ氏は2022年3月、ギャング関連の殺人事件が多発したことを受け、非常事態を宣言。刑法を改正するなどしてギャング掃討作戦を本格化させた。
それ以降に逮捕されたギャングまたはギャングと疑われる市民は9万人近くに達し、そのうち約1万人が証拠不十分で釈放された。
勾留中のギャングの90%が裁判を待っている状態だ。
非常事態令により、警察の権限は大幅に強化され、結社の自由や弁護人を選任する権利なども制限。警察は令状なしで家宅捜索を行ったり被疑者を拘束できるようになった。
また刑法改正により、ギャングに所属し逮捕された幹部の懲役刑は6年以上9年以下から「40年以上45年以下」、その他の構成員は3年以上5年以下から「20年以上30年以下」に引き上げられた。
ブケレ政権の掃討作戦により、国内のギャングはほぼ壊滅し、エルサルバドルは世界で最も危険な国から、中米で最も安全な国に豹変。昨年報告された殺人事件は214件で、2015年に記録した6600件の30分の1に激減した。
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