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ホンジュラス大統領選、内紛・遅延・システム不備で混乱、手作業で再集計

選挙からほぼ2週間経過した現在も最終結果が確定せず、政治的不信と緊張が国内で広がっている。
2025年11月30日/ホンジュラス、首都テグシガルパの投票所(ロイター通信)

中米ホンジュラスで11月30日に実施された大統領選挙は開票の遅延や組織内の対立、システムの欠陥が重なり混迷状態に陥っている。

選挙からほぼ2週間経過した現在も最終結果が確定せず、政治的不信と緊張が国内で広がっている。選挙を運営する国立選挙評議会(CNE)の準備不足や不手際が背景にあり、信頼性の低下が指摘されている。

今回の選挙ではトランプ(Donald Trump)米大統領の支持を受ける右派の国民党ナスリ・アスフラ(Nasry Asfura)氏が中道のナスララ(Salvador Nasralla)氏に対し、僅差でリードしているものの、開票作業は停滞している。

約15%の投票用紙が不整合と分類され、未集計のままであり、これらの票が結果に影響を与える可能性があるとして再集計が進められている。

選挙前のテスト運用で投票用紙処理システムが36%しか処理できなかったにもかかわらず、十分な対応が取られなかったことが明らかになっている。CNEは票集計を担当する業者として首都ボゴタに本社を置く「Grupo ASD」を8月末に選定したが、準備期間が不十分であったとの批判が出ている。同社の機器は集計作業やデータ送信で遅れが生じ、選挙後もシステム保守のために開票作業を数日間停止する事態となった。

国内では選挙制度そのものへの不信が広がるとともに、政治的対立も激化している。ナスララ氏は集計過程での不備を受け不正を主張、左派の現職カストロ(Xiomara Castro)大統領も選挙そのものを「詐欺」と非難した。

トランプ氏がアスフラ氏を公に支持し、不正疑惑を訴えたことも事態を複雑化させているが、国際的な選挙監視団体はこれまで体系的な不正行為は確認されていないと報告している。

CNE内部の混乱も混迷の一因となっている。評議会は主要政党から選出された3人の委員によって構成されているが、野党側の委員が会合をボイコットしたことにより手続きなどが遅れ、選挙準備の遅滞を招いたとの指摘がある。また、10月には国民党の委員が軍関係者と選挙に影響を与える計画を協議した疑いで検察当局の捜査対象となるスキャンダルも発生し、国民の信頼が一段と揺らいだ。

こうした状況に対し、専門家は一部の票について全面的な再集計を求める声を上げている。当局は現在、不整合のある投票用紙の手作業による特別集計を実施しており、12月30日までに結果を確定させる予定としているが、達成できるかは不透明な情勢だ。

ホンジュラスの選挙混乱は民主主義に対する信頼を試す事態となっており、政治的安定と選挙制度への信頼回復が今後の課題となっている。

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