◎この1カ月で2万2000人以上のギャングが逮捕された。
2022年3月29日/エルサルバドルの刑務所に移送されるギャング(Fred Ramos/The Washington Post)

人権NGOヒューマン・ライツ・ウォッチ(HRW)などは2日、エルサルバドルで行われているギャングの一斉検挙で人権侵害が横行しているとして、政府を批判した。

ギャング関連の殺人事件が急増した3月末から始まった一斉取り締まりは効果的に機能し、現地メディアによると、この1カ月で2万2000人以上が逮捕された。

HRWによると、裁判の日程が決まっていない拘留者は1万人以上にのぼるという。政府は被疑者の勾留期間を延長している。

権利団体は当局の取り締まりについて、「ギャングが多い地域で生活しているという理由だけで多くの市民が恣意的に取り調べを受けている」と批判している。

また一部のメディアによると、警察はノルマを達成するために、タトゥーをしている者を手当たり次第に取り締まっている可能性があるという。

議会は先月下旬、ブケレ大統領が発効した非常事態宣言の期間を30日間延長した。

当局は非常事態宣言の下、結社の自由や弁護人を選任する権利などを制限し、裁判所の許可を得ずに被疑者を拘束している。

HRWの報告書によると、3月末の宣言発出以来、当局が深刻な人権侵害を行っていることを示す証拠が多数見つかったという。

HRWは43人の被害者、親族、弁護士にインタビューを行ったとしている。

HRW米州局長代理のブローナー氏は報告書の中で、「私たちは無実の人々が恣意的に拘束され、短期間行方不明になったり、拘束中に死亡した事例を確認した」と述べている。

国内の刑務所は完全な過密状態で、昨年末の時点で収容率は130%を超えていたため、今回の一斉検挙で状態はさらに悪化したと伝えられている。

政府は刑務所の増設を約束しているが、数カ月は超過密状態が続くと見込まれる。

ブケレ大統領は他にも様々な施策を打ち出している。その中で特に物議を醸しているが刑罰の強化と刑事責任年齢の引き下げである。

ブケレ大統領は刑事責任を問える年齢を12歳以上に引き下げ、刑罰を大幅に強化した。

また議会は、ギャングのメッセージを共有したメディア(ジャーナリスト)に10年以上15年以下の禁固刑を科す新たな刑法を賛成多数で可決した。

刑務所に収容されたギャングは食事の量を減らされ、床で寝るよう命じられ、カエルのような姿勢で行進させられている。

ブケレ大統領は手錠をかけられたギャングの写真をSNSで共有し、ギャングに入った者は「刑務所か死に直面する」と警告した。また、一部の施策に批判的な人権団体や国際機関の警告を却下し、HRWを「ホームボーイズ・ライツ・ウォッチ」と呼ぶようになった。

中米最大のギャングであるマラ・サルバトルチャ(通称MS-13)やバリオ18などの構成員は7万人以上と伝えられている。ギャングの暴力に巻き込まれた市民は数知れず、危険な地域で生活していた数千人が亡命や逃亡を余儀なくされた。

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