◎ブケレ大統領は2022年3月、ギャング関連の殺人事件が多発したことを受け、非常事態を宣言。刑法を改正するなどしてギャング掃討作戦を本格化させた。
エルサルバドル、首都サンサルバドル、逮捕されたギャングの構成員と機動隊員(Getty Images/AFP通信/PAメディア)

米州人権委員会は4日、エルサルバドル政府に対し、2年半前に発令したギャング非常事態令を終了するよう求めた。

同委員会は声明で、「エルサルバドルにおける暴力の割合が急減していることから、非常事態令がもはや正当化できないことは明らかである」と指摘した。

また同委員会は「緊急事態は克服され、条約に沿った権利と保護の停止を積極的に維持することを正当化する状況はもはや存在しない」と述べた。

ブケレ(Nayib Bukele)大統領は2022年3月、ギャング関連の殺人事件が多発したことを受け、非常事態を宣言。刑法を改正するなどしてギャング掃討作戦を本格化させた。

それ以降に逮捕されたギャングまたはギャングと疑われる市民は8万人を超え、うち7000~8000人は証拠不十分で釈放されている。

非常事態令により、警察の権限は大幅に強化され、結社の自由や弁護人を選任する権利なども制限。警察は令状なしで家宅捜索を行ったり被疑者を拘束できるようになった。

また刑法改正により、ギャングに所属し逮捕された幹部の懲役刑は6年以上9年以下から「40年以上45年以下」、その他の構成員は3年以上5年以下から「20年以上30年以下」に引き上げられた。

国会はこの非常事態令を20回以上延長している。

人権団体や市民団体は弁護士へのアクセスや警察による逮捕理由の説明といった権利を停止することなく、ギャングを追及できると主張している。

ブケレ氏は先週掲載された地元メディアのインタビューで、「この2年間で達成した治安の改善・維持・向上は非常事態令がなくてもできる」と述べたが、ギャングの再興を防ぐためにはより多くの戦闘員を逮捕する必要があるとした。

ブケレ政権の掃討作戦により、国内のギャングはほぼ壊滅し、エルサルバドルは世界で最も危険な国のひとつから、中米で最も安全な国に豹変。昨年確認された殺人事件は214件で、2015年に記録した6656件の30分の1に激減した。

米州人権委員会は取り締まりの問題点として、▽恣意的な逮捕▽逮捕された者に不利な証拠が提示される▽集団審理▽弁護人へのアクセスの少なさを挙げている。

他の団体は裁判を待つ間、刑務所に収容された者が死亡した事案が数十件確認されていると指摘している。

スポンサーリンク