ハイチギャング戦争、対立か対話か、首都ポルトープランスで戦闘激化
ハイチはここ数十年の慢性的な政情不安、独裁政権、自然災害などにより、アメリカ大陸で最も貧しい国のひとつとなっている。2010年の大地震では20万人以上が死亡、その復興が進まぬ中、21年に地震が発生した。
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中米ハイチのフィゼメ(Alix Didier Fils-Aimé)首相が米国の民間軍事会社ブラックウォーターの創設者であるエリック・プリンス(Erik Prince)氏を雇い、首都ポルトープランスの大部分を支配するギャングに力で対抗しようとしている。
ハイチの治安は2021年7月のモイーズ(Jovenel Moise)大統領暗殺と同年8月に西部で発生したM7.2の大地震で崩壊し、破壊と暴力が蔓延している。
ポルトープランスでは3年ほど前から複数のギャングが地域の支配権をめぐって血みどろの抗争を繰り広げている。大統領のポストは今も空席のままだ。
ポルトープランスの90%がギャングの支配下に置かれ、市内の学校、企業、公共機関はほぼ全て閉鎖。2つの主要刑務所もギャングの攻撃で崩壊し、4000人以上の受刑者が脱獄した。
ポルトープランスと周辺地域の暴力は昨年10月頃から激化。アルティボニット県ではグラン・グリフとみられる武装ギャングが複数の地区を襲撃し、市民少なくとも115人を虐殺した。逮捕者は出ていない。
最新のギャング間抗争は3月初めに勃発。ポルトープランスの大部分を支配するギャング連合「ヴィヴ・アンサム(Viv Ansam)」と対立する複数のギャングが民間人を巻き込みながら激しい縄張り争いを繰り広げている。
一連の暴力とギャング間抗争により100万人以上が住居を失い、その多くが避難所に身を寄せている。
ニューヨーク・タイムズ紙は28日、ハイチ政府がギャング討伐を目的とする軍事作戦の一環として、プリンス氏を含む複数の請負業者を雇ったと報じた。
一部の専門家は年内にもポルトープランスの大統領府を含む市中心部が陥落する可能性があると指摘している。
暴力が激化する中、一部のカリブ海諸国は対立ではなく対話で問題を解決するよう呼びかけてきた。
国家警察とケニアが率いる国連支援ミッションはギャングへの対応に苦慮している。一部のハイチ市民は米資本の傭兵部隊の参戦を歓迎しているが、実現するかは不透明な情勢だ。
ハイチ政府はニューヨーク・タイムズ紙の報道を否定。プリンス氏と契約を結んでいないと明言した。
隣国ドミニカ共和国のスケリット(Roosevelt Skerrit)首相は今週初め、ハイチ政府に対し、ギャングリーダーたちとの直接協議を求め、危機的状況にあるハイチを救い、持続可能な平和を確立するためには対話が欠かせないと強調した。
他の指導者もハイチ政府にギャングとの交渉を促している。なぜなら、ヴィヴ・アンサムを含むギャングは既に主要な支配勢力となっているからだ。
スケリット氏は記者会見で、「今すぐにでもギャングとの対話を始めるべきだ」と語った。
米有力紙ワシントン・ポストは先月、ハイチ当局による武装ドローンの展開に関する取り組みを報じ、これを即席爆発装置(IED)を搭載した商業用モデルであると説明した。
ハイチ国家警察は武装ドローンの使用を否定。国連支援ミッションも関与を否定した。
一部の市民と市民団体は武装ドローンの使用を支持している。
一方、責任追及や付随的な被害への懸念を表明する声もある。
国連によると、ヴィヴ・アンサムは昨年、5600件を超える殺人事件に関与した。