ハイチはここ数十年の慢性的な政情不安、独裁政権、自然災害などにより、アメリカ大陸で最も貧しい国のひとつとなっている。2010年の大地震では20万人以上が死亡、その復興が進まぬ中、21年に地震が発生した。
ハイチのコニーユ首相(左)とブリンケン米国務長官(Getty Images/AFP通信)

ギャングの暴力に圧倒されている中米ハイチの暫定大統領評議会が10日、コニーユ(Garry Conille)首相を解任し、フィスエイム(Alix Didier Fils-Aimé)氏を後任とする政令に署名した。

この決議は11日付けで官報に掲載される予定。解任の理由は明らかになっていない。

フィスエイム氏は元上院議員。商工会議所の元会頭で、2015年の上院議員選に出馬するも落選。コニーユ氏が今年5月に暫定首相に就任する前、同ポストの候補のひとりであった。

コニール氏はSNSに声明を投稿。「暫定大統領評議会に首相を解任する権限はない」と非難した。

ハイチの治安は2021年7月のモイーズ(Jovenel Moise)大統領暗殺と同年8月に西部で発生したM7.2の大地震で崩壊し、破壊と暴力が蔓延している。

首都ポルトープランスでは2年ほど前から複数のギャングが地域の支配権をめぐって血みどろの抗争を繰り広げている。

ポルトープランスの80~90%がギャングの支配下に置かれ、市内の学校、企業、公共機関はほぼ全て閉鎖。2つの主要刑務所もギャングの攻撃で崩壊し、4000人以上の受刑者が脱獄した。

ポルトープランスと周辺地域の暴力は先月初め頃から激化。中部アルティボニット県では地元で「グラン・グリフ」と呼ばれているギャングが複数の地区を襲撃し、市民少なくとも115人を虐殺した。逮捕者は出ていない。

暫定大統領評議会は今年4月に設立され、次期首相と内閣を選ぶことを任務とし、混乱を鎮めると期待されていた。

しかし、評議会は複数の問題と内紛に悩まされ、コニーユ氏と対立。AP通信によると、米州機構が先週、意見の対立を収めようと試みたものの、失敗したという。

10月には評議会メンバーが汚職疑惑に直面。捜査当局が委員3人を収賄罪で告発した。それによると、3人は国営信用金庫の取締役への天下りと75万ドル以上の金銭を要求したとみられる。

同評議会は9人の委員で構成される。

スポンサーリンク