米民間軍事会社、ハイチギャング戦争に参戦か、政府と契約結ぶ

ハイチはここ数十年の慢性的な政情不安、独裁政権、自然災害などにより、アメリカ大陸で最も貧しい国のひとつとなっている。2010年の大地震では20万人以上が死亡、その復興が進まぬ中、21年に地震が発生した。
2022年8月22日/ハイチ、首都ポルトープランスで行われた抗議デモ(Odelyn Joseph/AP通信)

ハイチ政府が首都ポルトープランスの大部分を支配する強力なギャングと戦うため、米国の民間軍事会社ブラックウォーターの創設者であるエリック・プリンス(Erik Prince)氏を雇った。現地メディアが28日に報じた。

ハイチの治安は2021年7月のモイーズ(Jovenel Moise)大統領暗殺と同年8月に西部で発生したM7.2の大地震で崩壊し、破壊と暴力が蔓延している。

ポルトープランスでは3年ほど前から複数のギャングが地域の支配権をめぐって血みどろの抗争を繰り広げている。大統領のポストは今も空席のままだ。

ポルトープランスの90%がギャングの支配下に置かれ、市内の学校、企業、公共機関はほぼ全て閉鎖。2つの主要刑務所もギャングの攻撃で崩壊し、4000人以上の受刑者が脱獄した。

ポルトープランスと周辺地域の暴力は昨年10月頃から激化。アルティボニット県ではグラン・グリフとみられる武装ギャングが複数の地区を襲撃し、市民少なくとも115人を虐殺した。逮捕者は出ていない。

最新のギャング間抗争は3月初めに勃発。ポルトープランスの大部分を支配するギャング連合「ヴィヴ・アンサム(Viv Ansam)」と対立する複数のギャングが民間人を巻き込みながら激しい縄張り争いを繰り広げている。

一連の暴力とギャング間抗争により100万人以上が住居を失い、その多くが避難所に身を寄せている。

国家警察とケニアが率いる国連支援ミッションはギャングへの対応に苦慮している。

ニューヨーク・タイムズ紙は28日、ハイチ政府がギャング討伐を目的とする軍事作戦の一環として、プリンス氏を含む複数の請負業者を雇ったと報じた。

有力紙ワシントン・ポストは4月、ハイチ当局による武装ドローンの展開に関する取り組みを報じ、これを即席爆発装置(IED)を搭載した商業用モデルであると説明した。当局はIED搭載ドローンによる戦果を報告していない。

一部の市民と市民団体は武装ドローンの使用を支持している。

一方、責任追及や付随的な被害への懸念を表明する声もある。

国家警察は武装ドローンの使用を否定。国連支援ミッションも関与を否定した。

ニューヨーク・タイムズ紙はプリンス氏がハイチ系米国人の退役軍人を採用し、ポルトープランスに派遣して現地の部隊を支援する計画を進めていると報じた。

また同紙はプリンス氏が夏までに最大150人の傭兵をハイチに派遣する予定で、既に大量の武器を現地に輸送しているとした。

ハイチ政府はニューヨーク・タイムズ紙の報道を否定。プリンス氏と契約を結んでいないと明言した。

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