ハイチ政府、武装ギャング対策で民間軍事会社と契約、初めて認める
ハイチの治安は2021年7月のモイーズ大統領暗殺と同年8月に西部で発生したM7.2の大地震で崩壊し、破壊と暴力が蔓延している。
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ハイチ暫定大統領評議会のアルフォンス・ジャン(Fritz Alphonse Jean)議長がギャングとの戦いを有利に進めるため、外国の民間軍事会社を雇っていることを初めて認めた。
ジャン氏は地元メディアが20日に報じたインタビューで傭兵を雇っていることを確認したが、それ以上の詳細は明らかにしなかった。
ニューヨーク・タイムズ紙は先月末、ハイチ政府がギャング討伐を目的とする軍事作戦の一環として、米国の民間軍事会社ブラックウォーターの創設者であるエリック・プリンス(Erik Prince)氏を含む複数の請負業者を雇ったと報じた。
ジャン氏はインタビューの中で、「国家警察の弱点を補うことが重要である」と語った。
またジャン氏は国連支援ミッションと国家警察がギャングへの対応に苦慮する中、公費で傭兵を雇っていることについて、「国民を守る取り組みの一環である」と強調した。
ハイチの治安は2021年7月のモイーズ(Jovenel Moise)大統領暗殺と同年8月に西部で発生したM7.2の大地震で崩壊し、破壊と暴力が蔓延している。
首都ポルトープランスでは3年ほど前から複数のギャングが地域の支配権をめぐって血みどろの抗争を繰り広げている。大統領のポストは今も空席のままだ。
ポルトープランスの90%がギャングの支配下に置かれ、市内の学校、企業、公共機関はほぼ全て閉鎖。2つの主要刑務所もギャングの攻撃で崩壊し、4000人以上の受刑者が脱獄した。
ポルトープランスと周辺地域の暴力は昨年10月頃から激化。アルティボニット県ではグラン・グリフとみられる武装ギャングが複数の地区を襲撃し、市民少なくとも115人を虐殺した。逮捕者は出ていない。
最新のギャング間抗争は3月初めに勃発。ポルトープランスの大部分を支配するギャング連合「ヴィヴ・アンサム(Viv Ansam)」と対立する複数のギャングが民間人を巻き込みながら激しい縄張り争いを繰り広げている。
国連は先週、ギャングがポルトープランスを越えて中央地域に影響力を拡大していると警告。今年1月から5月末までの間に少なくとも2680人がギャング暴力で死亡し、130万人もの市民が避難を余儀なくされていると明らかにした。
ニューヨーク・タイムズ紙はプリンス氏がハイチ系米国人の退役軍人を採用し、ポルトープランスに派遣して現地の部隊を支援する計画を進めていると報じていた。
また同紙はプリンス氏が夏までに最大150人の傭兵をハイチに派遣する予定で、既に大量の武器を現地に輸送しているとした。
ハイチの人権団体は民間軍事会社の参戦に深刻な懸念を表明し、武装ドローンなどが投入されることで戦闘に巻き込まれる一般市民が増える可能性があると警告している。
ジャン氏は「国家警察をサポートするために、引き続き国際社会に支援を求める」と強調。傭兵を雇うために4400万ドルもの予算が計上されたという地元メディアの報道を肯定も否定もしなかった。
ブラックウォーターUSA(現アカデミ)はイラク戦争などで活動。2007年に首都バグダッドで発生した民間人射殺事件で世界的に知られるようになった。