◎訪問先のケニアから米領プエルトリコに移動したアンリ首相は厳しい現実に直面している。
戦争状態に陥っている中米ハイチの野党政治家たちがアンリ(Ariel Henry)首相に辞任を要求し、新政権樹立に向けた協議を進めている。現地メディアが6日に報じた。
それによると、反政府指導者フィリップ(Guy Philippe)氏や現職の国会議員などが連立政権を模索する評議会を結成することで合意したという。
地元ラジオ局はフィリップ氏の声明を引用し、「我々はこの国をひとつにまとめることで完全に一致しており、無能なアンリに引退を勧告する予定だ」と報じた。
ハイチの治安は2021年7月のモイーズ(Jovenel Moise)大統領暗殺と同年8月に西部で発生したM7.2の大地震で崩壊し、破壊と暴力が蔓延している。
首都ポルトープランスでは1年ほど前から同国最大の武装ギャング「G9&Family」を含む複数のギャングが地域の支配権をめぐって血みどろの抗争を繰り広げている。
ポルトープランスの80%がギャングの支配下に置かれ、市内の学校、企業、公共機関はほぼ全て閉鎖。2つの主要刑務所もギャングの攻撃で崩壊し、4000人以上の受刑者が脱獄した。
訪問先のケニアから米領プエルトリコに移動したアンリ氏は厳しい現実に直面している。
フィリップ氏らが結成した新たな政治同盟が今後どのような動きに出るかは不明。一部の地元メディアはギャングの指導者と交渉に応じる用意があると伝えている。
フィリップ氏はアリスティド(Jean-Bertrand Aristide)前大統領を追放した2004年の反乱の中心人物であり、マネーロンダリング(資金洗浄)などに関与した罪で逮捕・起訴され、米国で9年間服役。昨年末出所し、ハイチに帰国した。
一方、米国のトーマスグリーンフィールド(Linda Thomas-Greenfield)国連大使は6日、ハイチが危機的状況に置かれていることについて、「アンリ首相に暫定評議会を設立し、選挙に向けた準備と政治プロセスを確立するよう要請している」と明らかにした。
またトーマスグリーンフィールド氏は「アンリ首相もハイチに平穏を取り戻すためのプロセスを開始することが急務であると考えている」と述べた。
米国務省のミラー(Matthew Miller)報道官もトーマスグリーンフィールド氏の発言に同調。「米政府は一方的に行動せず、カリブ海地域のパートナーと協議している」と強調した。
アンリ氏は先週末、ケニアのルト(William Ruto)大統領と会談し、警察官約1000人をハイチに派遣する協定に署名した。
しかし、ケニアの高等裁判所は先月末、「安保理の決定に基づきハイチにケニアの警察官を派遣することは違憲である」と裁定。この裁判は現在、最高裁で争われている。
アンリ氏はギャング暴力の影響で何度も総選挙を延期。大統領は今も空席のままである。