◎ハイチの治安は2021年7月のモイーズ大統領暗殺と同年8月に西部で発生したM7.2の大地震で崩壊し、破壊と暴力が蔓延している。
ギャングの支配下に置かれる中米ハイチの暫定評議会が新首相の選出をめぐり、分裂の危機に瀕している。現地メディアが1日に報じた。
暫定評議会は先月末発足。9人の委員のうち7人が議決権を有している。
同評議会は4月30日、ベリゼール(Fritz Belizaire)元スポーツ相を首相に選出。それは予想外の決定であり、多くの同盟国と国民を驚かせた。
地元メディアによると、9人の委員のうち少なくとも2人がベリゼール氏のことを全く知らなかったという。
議決権をもつ7人のうち4人がベリゼール氏を首相に選んだ。
ベリゼール氏は2006~11年までスポーツ相を務めたものの、ほとんど知られておらず、多くの国民がこの選出に不安と困惑を表明している。
ベリゼール氏の選出に反対する委員はこれに異議を唱えるか、辞任するかを検討しているようだ。
AP通信はこの問題に詳しい関係者の話しとして、「予期せぬ決定により、評議会の協定が破られた」と伝えている。
それによると、複数の委員が議長に異議を申し立て、辞任を検討していると伝えたという。
30日の会合では議長も選出された。それから約2時間後、ベリゼール氏が首相に選出されたと発表。会場でざわめきが起きた。
議決権を持つ委員が代表を務める市民社会団体「モンタナ・アコード」は30日遅くの声明で、「4人の委員がハイチ国民に対して、新たな陰謀を企てた」と非難した。
同団体はこう強調した。「政治・経済マフィア勢力は暫定評議会と首相府を掌握し、国家を支配し続けようとしています...」
ハイチの治安は2021年7月のモイーズ(Jovenel Moise)大統領暗殺と同年8月に西部で発生したM7.2の大地震で崩壊し、破壊と暴力が蔓延している。
ポルトープランスでは1年ほど前から複数のギャングが地域の支配権をめぐって血みどろの抗争を繰り広げている。
ポルトープランスの80%がギャングの支配下に置かれ、市内の学校、企業、空港、公共機関はほぼ全て閉鎖。2つの主要刑務所もギャングの攻撃で崩壊し、4000人以上の受刑者が脱獄した。
過去1カ月で9万人以上がポルトープランスから脱出。この1年で36万人以上がホームレスになったと推定されている。