ハイチギャング戦争、暴力激化で5000人死亡=国連

OHCHRは報告書の中で、「過去数ヶ月の暴力の激化は凄まじく、ギャングが国家警察を圧倒している」と指摘した。
2022年10月30日/ハイチ、首都ポルトープランス、負傷した記者を運ぶ人々(Ramon Espinosa/AP通信)

国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)は11日、中米ハイチでギャング暴力が激化し、24年10月以降、首都ポルトープランスとその周辺で約5000人が殺害され、数十万人が新たに避難を余儀なくされたと明らかにした。

OHCHRは報告書の中で、「過去数ヶ月の暴力の激化は凄まじく、ギャングが国家警察を圧倒している」と指摘した。

またOHCHRは「ポルトープランス以外の地域、政府の統治が届かない地域で人権侵害が横行・激化している」と述べた。

さらに、「国際社会は暫定政府への支援を直ちに強化すべきだ」と付け加えた。

ハイチの治安は2021年7月のモイーズ(Jovenel Moise)大統領暗殺と同年8月に西部で発生したM7.2の大地震で崩壊し、破壊と暴力が蔓延している。

ポルトープランスでは3年ほど前から複数のギャングが地域の支配権をめぐって血みどろの抗争を繰り広げている。大統領のポストは今も空席のままだ。

ポルトープランスの90%がギャングの支配下に置かれ、市内の学校、企業、公共機関はほぼ全て閉鎖。2つの主要刑務所もギャングの攻撃で崩壊し、4000人以上の受刑者が脱獄した。

ポルトープランスと周辺地域の暴力は昨年10月頃から激化。アルティボニット県ではグラン・グリフとみられる武装ギャングが複数の地区を襲撃し、市民少なくとも115人を虐殺した。逮捕者は出ていない。

最新のギャング間抗争は3月初めに勃発。ポルトープランスの大部分を支配するギャング連合「ヴィヴ・アンサム(Viv Ansam)」と対立する複数のギャングが民間人を巻き込みながら激しい縄張り争いを繰り広げている。

OHCHRは以前の報告書で、ギャングがポルトープランスを越えて中央地域に影響力を拡大していると警告。今年1月から5月末までの間に少なくとも2680人がギャング暴力で死亡し、130万人もの市民が避難を余儀なくされていると報告していた。

OHCHRは今回、報告書を更新し、24年10月~25年6月までの間に、ギャング暴力により全国で少なくとも4864人が死亡したと明らかにした。

そのうち1000人以上がポルトープランスとその周辺地域で殺害されたとのこと。

国連薬物犯罪事務所(UNODC)は今月初め、ギャングがポルトープランスの「ほぼ全域」を支配したと明らかにした。

国連ハイチ統合事務所(BINUH)が運営するMSS(ハイチ国連支援ミッション)はポルトープランスなどで国家警察を支援しているが、兵力、資金、装備の不足に直面し、困難な状況にある。

暫定大統領評議会のアルフォンス・ジャン(Fritz Alphonse Jean)議長は先月、ギャングとの戦いを有利に進めるため、外国の民間軍事会社を雇っていることを初めて認めた。

その中には米国の民間軍事会社ブラックウォーターUSAの創設者であるエリック・プリンス(Erik Prince)氏を含む複数の請負業者が含まれている。

ブラックウォーターUSA(現アカデミ)はイラク戦争などで活動。2007年に首都バグダッドで発生した民間人射殺事件で世界的に知られるようになった。

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