◎ハイチの治安は昨年7月のジョブネル・モイーズ大統領暗殺事件と8月の大地震で急速に悪化した。
3月29日、中米ハイチの主要都市でギャングの暴力やインフレに抗議するデモが行われ、南部の都市ではデモ隊が空港を襲撃した。
南部レ・カイの当局者は29日、アントワーヌ=シモン空港の警察とデモ隊が衝突し、少なくとも1人が死亡、警察官4人と市民1人が負傷したと明らかにした。
当局者はAP通信の取材に対し、「死亡したのは警察官に撃たれたデモ参加者」と説明したが、発砲に至った経緯は明らかにしなかった。
デモ隊は空港内に駐機していた小型機を攻撃し、火を放ったと報告されている。
この抗議デモは憲法制定35周年に合わせて行われた。デモ隊はギャングの誘拐事件が急増していることや、アンリ首相の政治手腕、燃料価格の高騰やインフレに抗議した。
アンリ首相に対する抗議はデモだけでなくストライキや激しい暴動に発展している。
アンリ首相は自身のツイッターアカウントでレ・カイの暴動を非難し、デモ隊を率いた人物や団体を特定するよう当局に命じたと明らかにした。
レ・カイの当局者によると、デモ隊は空港の警備を勢いで圧倒し、滑走路を占領したのち、小型機に火をつけたという。
ソーシャルメディアに投稿された動画には、小型機が暴徒に取り囲まれる様子が映っていた。当局者は、「小型機が攻撃を受けた理由は分からないが、警察が事態を収拾した」と述べた。
首都ポルトープランスでも抗議デモが行われ、多くの市民がタイヤに火をつけた。一部の抗議者はギャングの暴力が増加している理由はアンリ首治にあると非難していた。
ポルトープランスのデモに参加した女性はAP通信の取材に対し、「政府は地震の被災者を救済せず、ギャングとインフレを放置しています」と語った。「政府は対応すると約束しましたが、何もできていません...」
半年前に就任したアンリ首相は治安を改善すると公言したにもかかわらず、国の治安はこの半年で劇的に悪化した。
国連安全保障理事会が2月中旬に公表した報告書によると、ハイチの2021年の誘拐事件数は前年から180%増加し、警察は誘拐事件を655件報告したという。国連は、公になっていない誘拐事件は数百件にのぼる可能性があると警告している。
ハイチの治安は昨年7月のジョブネル・モイーズ大統領暗殺事件と8月の大地震で急速に悪化し、ギャングの台頭、進行中の燃料危機、インフレは混乱に拍車をかけた。政府はモイーズ大統領の暗殺に関与したとされる民兵を追跡しているが、事件の全容はまだ解明されていない。
また、2010年1月に発生したハイチ地震(M7.0)の復興も道半ばの状態で、人口の約60%が貧困ライン以下の生活を余儀なくされている。この地震の死亡者は30万人以上と推定されているが、正確な数は分かっていない。