◎ハイチの治安は昨年7月のモイーズ大統領暗殺事件と8月に西部で発生したM7.2の大地震で崩壊し、暴力が蔓延している。
2021年11月4日/ハイチ、首都ポルトープランス(Getty Images/AFP通信)

国連特使は26日、中米ハイチが人道的大惨事に見舞われ、崩壊の危機に瀕していると警鐘を鳴らした。

ハイチのライム(Helen La Lime)国連特使は安全保障理事会の緊急会合で、「ハイチは数週間にわたるギャングの暴力、経済・政治・食料危機に見舞われている」と警告した。

ハイチの治安は昨年7月のモイーズ(Jovenel Moise)大統領暗殺事件と8月に西部で発生したM7.2の大地震で崩壊し、暴力が蔓延している。

ポルトープランスでは3カ月ほど前から複数のギャングが地域の支配権をめぐって激しい戦闘を繰り広げており、国連によると、7月中旬以降の死者、負傷者、行方不明者は確認できているだけで500人を超え、数千人が国内避難民になった。

この数カ月でハイチの市民数万人が国外に逃亡したと推定されている。その多くが難民となり、メキシコ経由で米国を目指している。

国内の企業はインフレと暴力の影響で閉鎖を余儀なくされ、交通機関も運休し、一部の地域では食料の確保すら難しくなっている。

ポルトープランスではアンリ(Ariel Henry)首相の辞任を求めるデモが続いている。

アンリ氏は今月11日に燃料の補助金を廃止し、ガソリンとディーゼルの価格が高騰。多くの市民が不満を表明し、抗議デモに参加している。

AP通信によると、ポルトープランスを含む主要都市では略奪と暴力が横行している。

ライム氏は26日、安保理会合の中で、「世界食糧計画(WFP)の倉庫が攻撃を受け、推定2000トン、500万ドル相当の物資が失われた」と報告した。

ライム氏によると、この物資は貧困層約20万人の今後1カ月の人道支援に充てられる予定だったという。

WFPの事務局長も会合に出席し、ハイチの状況を「絶望的」と評した。「ハイチの状況は新たなレベルに達しています」

ライム氏は国民の40%がWFPの食料支援に頼っていると指摘。少なくとも130万人が明日の食料を確保できず、今後ハイチの食料安全保障はさらに悪化すると警告した。

ハイチの最大の問題は犯罪組織であり、まずはギャングの暴力を抑える必要がある。

モイーズ大統領の暗殺以来、ギャングの暴力は急増し、今年7月には「G9&Family」と「G-Pep」と呼ばれる2つの主要ギャングがポルトープランスの支配権をめぐって激しい戦闘を開始。首都の治安は崩壊した。

しかし、安保理会合に出席したハイチのジェネウス(Jean Victor Geneus)外相は、いくつかのケースを除いて、島内の暴力はおおむね制御下にあり、一部地域には平穏が戻ってきたと主張した。

ジェネウス氏は武装ギャングと戦うためには警察の能力を強化する必要があるとして、国際社会に支援を提供するよう求めた。

2021年10月22日/ハイチ、首都ポルトープランス、ギャンググループ「G9&Family」のリーダー(Matias-Delacroix/AP通信)
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