ハイチで性暴力や虐待急増、国境なき医師団が警告、ギャング戦争激化
MSFの報告によると、ポルトープランスのクリニックは過去10年間で約1万7000人の患者を治療し、2025年の9カ月だけで2300人を診察した。
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ハイチでギャングによる暴力が激化する中、国際医療支援団体「国境なき医師団(MSF)」は28日、同国で性暴力や虐待が爆発的に増加していると警告した。首都ポルトープランスでMSFが運営するクリニックで治療を受けた性暴力被害者の件数は、過去4年間で約3倍に増加したという。
MSFの報告によると、ポルトープランスのクリニックは過去10年間で約1万7000人の患者を治療し、2025年の9カ月だけで2300人を診察した。そのうち350人以上が男性や少年で、性別を問わず暴力の犠牲となっている。多くのケースで複数のギャングメンバーが関与し、1件につき平均3人が加害者として関わっていたという。100人以上の集団で襲撃される事例も報告されている。
被害者の年齢層もこれまでとは変化しており、2022年以前は被害者の半数が18歳未満であったが、現在では24%にとどまる一方で、50歳から80歳までの年齢層の被害件数が7倍に増えている。こうした変化は性暴力が子どもや若年層に限られず、社会全体に広がっていることを示している。
MSFはギャングが性暴力を「恐怖を植え付け、支配を強化し、人道支援へのアクセスを操作する手段」として利用していると指摘した。ギャングは誘拐や縄張り争い、人道支援物資の分配を巡る衝突の際に暴力を用い、住民を支配下に置くために性的暴力が頻繁に行われているという。
ギャングによる暴力は広範囲に及び、国連によると、ポルトープランスの90%がギャングの支配下にあるとされる。このため、暴力を逃れて家を追われた人々は安全な避難所を求めて流民となり、約140万人が国内で避難生活を強いられている。避難民の多くが十分な保護を受けられず、性暴力のリスクにさらされている。
MSFはまた、被害を受けた後に適切な医療を受けるまでの時間が長引いていることを懸念している。2022年には多くの被害者が襲撃後3日以内にクリニックを訪れていたが、近年では半数以下に減少し、HIV感染予防薬や望まない妊娠防止のための治療を受ける機会が失われているという。これは治療を求めること自体に恐怖や恥が伴う現実を反映している。
住民が医療支援を求めることをためらう理由として、警察や司法制度への信頼が低く、ギャングの支配する地域に住むことで報復を受ける恐れがあることも挙げられている。このため、被害者の多くが適切な支援を受けられず、暴力の連鎖に巻き込まれるケースが後を絶たない。
MSFはハイチ政府に対し、性暴力の被害者を支援する無料の医療や心理的ケア、法的支援の強化を求めている。また、被害者が24時間利用できる機密性の高いホットラインの設置など、具体的な支援体制の構築を訴えている。こうした支援が不十分なままでは、暴力のサイクルから抜け出すことは困難だと警告している。
現在のハイチでは政治的混乱や治安悪化が続き、国際社会や人道支援団体による対策強化が急務となっている。性暴力や虐待の危機は単なる犯罪の拡大にとどまらず、社会全体の安全と人権を脅かす重大な問題として深刻化している。
