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ハイチ中部でギャングが大規模襲撃、死傷者多数=報道

ギャングは家屋や建物に火をつけ、住民たちは11月29日深夜から夜明けにかけて銃声を聞きながら逃げ惑い、多くが家を捨てざるを得なかった。
2021年11月4日/ハイチ、首都ポルトープランス(Getty Images/AFP通信)

ハイチ中部アルティボニット県などで週末、武装ギャングによる大規模な襲撃があり、多数の民間人が死亡・負傷、住民らが銃撃と放火を避けて避難する事態になった。地元当局が1日、明らかにした。

それによると、今回の襲撃により男性、女性、子どもを含む少なくとも十数人が死亡したという。

ギャングは家屋や建物に火をつけ、住民たちは11月29日深夜から夜明けにかけて銃声を聞きながら逃げ惑い、多くが家を捨てざるを得なかった。

地元メディアは警察筋の話しとして、「この襲撃によりアルティボニット県の約半分がギャングの支配下に落ちた恐れがある」と報じた。

治安部隊の大半は首都ポルトープランスに留まり、中央部の警備ができていない状態だ。地元メディアは「国の主要な県を失うのは近代ハイチ史上初、最大の危機である」と伝えている。

襲撃後、多くの住民が近隣の地区に逃れ、街には不安と怒りが広がっている。避難者の中には「政府を信頼できない」「自分たちでギャングと戦う」と声をあげる者もいた。

ある男性はAP通信の取材に対し、「武器をよこせ、ギャングと戦う」と語った。

現地メディアによると、一部の暴徒が政府機関や警察署に押し入り、銃器を略奪したという。

地元の人権団体は市民に対し、警察署や行政庁舎などで身を守るよう呼びかけているが、食料や住まいの確保が困難な状況と警鐘を鳴らす。

ハイチの治安は2021年7月のモイーズ氏暗殺と同年8月に西部で発生したM7.2の大地震で崩壊し、破壊と暴力が蔓延している。

ポルトープランスでは4年ほど前から複数のギャングが地域の支配権をめぐって血みどろの抗争を繰り広げている。大統領のポストは今も空席のままだ。

ポルトープランスの90%がギャングの支配下に置かれ、市内の学校、企業、公共機関はほぼ全て閉鎖。2つの主要刑務所もギャングの攻撃で崩壊し、4000人以上の受刑者が脱獄した。

ポルトープランスと周辺地域の暴力は昨年10月頃から激化。アルティボニット県ではグラン・グリフとみられる武装ギャングが複数の地区を襲撃し、市民少なくとも115人を虐殺した。逮捕者は出ていない。

ポルトープランスでは現在もギャング連合「ヴィヴ・アンサム(Viv Ansam)」と対立する複数のギャングが民間人を巻き込みながら激しい縄張り争いを繰り広げている。

今回の襲撃にはグラン・グリフが関与しているとみられる。このギャングは過去にも多くの無差別殺害、放火、略奪、住民の追放などを繰り返してきた。

暴力の頻発により、今年に入ってからアルティボニット県を含む中央部では殺人事件が急増している。

ギャングの支配拡大と治安部隊の後退により、ハイチでは首都だけでなく地方にも暴力が広がっており、住民の生活と安全が根本から揺らいでいる。

国際社会や人道支援団体は避難民の支援、地域の防衛、治安回復に向けた取り組みを強化すべきと声をあげている。政府にはギャング壊滅と住民保護の責任が改めて問われている。

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