ハイチギャング戦争、避難民130万人に達する=国連IOM

ハイチはここ数十年の慢性的な政情不安、独裁政権、自然災害などにより、アメリカ大陸で最も貧しい国のひとつとなっている。2010年の大地震では20万人以上が死亡、その復興が進まぬ中、21年に地震が発生した。
2022年10月10日/ハイチ、首都ポルトープランス(Odelyn Joseph/AP通信)

国連の専門機関である国際移住機関(IOM)は11日、中米ハイチ全土でギャング暴力により、130万人が避難を余儀なくされていると明らかにした。

IOMは首都ポルトープランスの大部分がギャングの支配下に置かれる中、ハイチの窮状を概説した。

それによると、24年12月以降、全土の避難民が24%急増したという。

ハイチの人口は約1200万人。そのうち約11%がギャング暴力によって自宅を追われたことになる。

ハイチの治安は2021年7月のモイーズ(Jovenel Moise)大統領暗殺と同年8月に西部で発生したM7.2の大地震で崩壊し、破壊と暴力が蔓延している。

ポルトープランスでは3年ほど前から複数のギャングが地域の支配権をめぐって血みどろの抗争を繰り広げている。大統領のポストは今も空席のままだ。

ポルトープランスの90%がギャングの支配下に置かれ、市内の学校、企業、公共機関はほぼ全て閉鎖。2つの主要刑務所もギャングの攻撃で崩壊し、4000人以上の受刑者が脱獄した。

ポルトープランスと周辺地域の暴力は昨年10月頃から激化。アルティボニット県ではグラン・グリフとみられる武装ギャングが複数の地区を襲撃し、市民少なくとも115人を虐殺した。逮捕者は出ていない。

最新のギャング間抗争は3月初めに勃発。ポルトープランスの大部分を支配するギャング連合「ヴィヴ・アンサム(Viv Ansam)」と対立する複数のギャングが民間人を巻き込みながら激しい縄張り争いを繰り広げている。

IOMによると、ギャング暴力の多くがポルトープランスに集中しているという。

またIOMは「ポルトープランス北部の2地域だけで23万人以上が住居を失ったと推定している」と明らかにした。

さらに、国際社会が一致団結してこの危機に対処する必要があると強調した。

仮設避難所の数もこの半年で70%以上急増、142から246に増加した。増加の大部分はかつて平和だった中央地域で報告されている。

IOMは中央部でも暴力が急増し、ポルトープランス以外の避難所の数が初めて全体の半数を上回ったと明らかにした。

国連の世界食糧計画(WFP)が先週公表したレポートによると、ハイチの人口の半数にあたる約570万人が緊急支援を必要とし、そのうち約200万人は10以上の国連機関、政府、援助団体などが参加する「総合的食料安全保障レベル分類(IPC)」の飢饉調査委員会(FRC)が定めるフェーズ4とフェーズ5に該当するという。

フェーズ3は危機レベルの飢餓と定義され、フェーズ4は緊急事態、フェーズ5は大災害または飢饉とみなされる。

WFPは約200万人がフェーズ4、約8500人がいつ餓死してもおかしくないフェーズ5に該当すると説明している。

ハイチ国家警察とアフリカ東部・ケニアが率いる国連支援ミッションはギャングへの対応に苦慮しており、一部の専門家は年内にもポルトープランス全域がギャングの支配下に置かれる可能性があると警告している。

米政府は先月初め、ヴィヴ・アンサムとグラン・グリフを「外国テロ組織」と「国際テロリスト」に指定した。

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