国境なき医師団、ハイチ首都での医療活動を一時停止、ギャング暴力激化
国連の報告によると、昨年7月から9月にかけてハイチ国内では少なくとも1247人が暴力で死亡、710人以上が負傷している。
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国際医療支援団体「国境なき医師団(MSF)」は8日、中米ハイチの首都ポルトープランスでギャング間抗争が激化したことを受け、市内での医療サービスを一時停止したと発表した。この措置は治安悪化による人道支援活動への打撃として懸念を呼んでいる。
MSFがサービス停止を発表したのはポルトープランス中心部のスラム街で運営していたクリニックである。このクリニックは数千人の住民にとって唯一の医療提供拠点となっており、定期的な診療や基本的なケアを提供していた。だが、警察と複数の武装ギャングとの間の衝突が激化した結果、治安状況が極度に悪化し、医療活動の継続が困難になった。
このスラム街はポルトープランスの大部分を支配するギャング連合「ヴィヴ・アンサム(Viv Ansam)」の関連組織が支配している。MSFによると、現地での暴力的な衝突により、7人の医療ボランティアがクリニック内で数時間にわたり足止めされ、ボランティア1人が重傷を負い、建物の前で息を引き取ったという。MSFは声明で、「このような暴力は日常茶飯事であり、市民、職員、ボランティアが命の危険にさらされている」と述べた。
MSFは2022年から市内で活動し、暴力によるサービス停止はこれが初めてではない。昨年10月には別の地域にあった救急医療センターも、同様の暴力激化のため閉鎖している。ポルトープランス市内ではギャング勢力が市域の約90%を掌握し、これに伴い医療施設の約60%が閉鎖または機能停止に追い込まれている。国の一般病院も例外ではなく、十分な医療体制が維持できない状況にある。
国連の報告によると、昨年7月から9月にかけてハイチ国内では少なくとも1247人が暴力で死亡、710人以上が負傷している。また数年にわたる暴力の影響で140万人以上が国内避難を余儀なくされているという。こうした長期的な治安悪化が国全体の社会基盤と公共サービスに甚大な影響を与えている。
この危機的状況に対応するため、国連が主導する治安維持ミッションが展開されている。ケニア警察が主導するこのミッションは、警察力が不足し資金も逼迫するハイチ国家警察を助けることを目的とし、ギャングを制圧する権限を持つ「ギャング抑止部隊」への移行が進められている。しかし、2025年末時点で人員や資金は当初の計画を大きく下回り、治安改善への実効性に疑問が残る。
MSFは活動継続の条件として、現地の安全確保を強調してきたが、今回のサービス停止はハイチにおける医療アクセスの悪化を象徴する出来事となった。現地住民や支援関係者は、暴力が続く限り医療・人道支援の危機が深刻化すると懸念を強めている。特に慢性的な病気や負傷者、妊産婦らにとってクリニック閉鎖は命に関わる問題であり、国際社会の支援と治安改善策の進展が急務となっている。
