メキシコ首都で農家による抗議デモ、トラクターで議会封鎖
農家たちは議会で審議中の国家水資源法の改正案が農村部から水を奪い、都市や産業用途へ再配分することを可能にするものだとして、強く反発している。
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メキシコの多数の農家が3日、首都メキシコシティにトラクターで乗り込み、議会議事堂に通じる入り口を封鎖した。
農家たちは議会で審議中の国家水資源法の改正案が農村部から水を奪い、都市や産業用途へ再配分することを可能にするものだとして、強く反発している。
農家たちは「田舎が影響を受ければ、都市にも影響が及ぶ」と訴える横断幕を掲げ、政府与党に再考を求めた。
この改正案は水利用に関する規制を強化し、水関連の犯罪に対する刑罰を厳格化、さらに水の権利(使用許可・譲渡・再割り当てなど)を連邦レベルで管理し直すことを柱としており、与党が主導している。政府側は既存の水供給制度に汚職や腐敗が蔓延しているとして、水利用の透明性と公平性を確保する必要があると主張してきた。
しかし農民たちは、この法案が通れば、自分たちが長年使ってきた水のアクセス権が奪われ、土地の所有権そのものが脅かされる可能性があると主張。「土地の所有と水の権利を危険にさらす改革」と非難している。
今回の議会前封鎖は数日前に農民とトラック運転手たちが全国7州以上で道路や高速道路を封鎖した抗議デモの延長である。当時は作物の価格引き上げや高速道路の治安改善、そして法案反対を訴えていた。
これらは政府との交渉で一部合意に至ったものの、農業団体の指導者たちは「法案が通れば、抗議は再開・拡大する」と警告していた。今回の封鎖はその警告どおりの動きとなった。
農民たちの危機感は、水と土地の根源的な部分にある。メキシコの農村地域では、かねてより灌漑や地下水、河川からの水利用が生計の基盤に直結しており、水資源の管理や割り当ての変更は日々の農作業だけでなく、土地の価値や次世代への継承にも影響しかねない。今回の法案はそのような農村の生活基盤を大きく揺るがすものだと受け止められている。
一方で政府側は、水の配分や利用権を中央管理することで、不正な水権売買や過剰取水、産業や都市への偏重を防ぎ、水資源の管理を効率化・公正化できると主張しており、農村と都市、産業の間で水の分配を巡る利害対立が浮き彫りとなっている。
今回の議会前封鎖について、農民側のリーダーたちは「この法案が撤回されない限り、全国規模での抗議を継続する」と明言している。
水資源や土地所有の在り方を巡るこの対立は単なる法案への反対を超えて、メキシコ社会における「土地と水の権利」「農村の生存」といった根幹にかかわる問題を示すものとなっている。
