▽ブケレ大統領は2022年3月、ギャング関連の殺人事件が多発したことを受け、非常事態を宣言。刑法を改正するなどしてギャング掃討作戦を本格化させた。
中米エルサルバドルのブケレ(Nayib Bukele)大統領は1日、同国の昨年の殺人件数が過去最低を大幅に更新したと明らかにした。
ブケレ氏はX(旧ツイッター)に声明を投稿。昨年の殺人件数が過去最低の114件となり、自身の政策により、治安が劇的に改善したと強調した。
それによると、人口10万人あたりの殺人件数は1.9件まで低下。23年の全ての中南米諸国の値を下回った。
ブケレ氏は2022年3月、ギャング関連の殺人事件が多発したことを受け、非常事態を宣言。刑法を改正するなどしてギャング掃討作戦を本格化させた。
それ以降に逮捕されたギャングまたはギャングと疑われる市民は8万3000人を超え、うち約8000人が証拠不十分で釈放されている。
非常事態令により、警察の権限は大幅に強化され、結社の自由や弁護人を選任する権利なども制限。警察は令状なしで家宅捜索を行ったり被疑者を拘束できるようになった。
また刑法改正により、ギャングに所属し逮捕された幹部の懲役刑は6年以上9年以下から「40年以上45年以下」、その他の構成員は3年以上5年以下から「20年以上30年以下」に引き上げられた。
ブケレ政権の掃討作戦により、国内のギャングはほぼ壊滅し、エルサルバドルは世界で最も危険な国から、中米で最も安全な国に変容。23年の殺人事件は214件で、2015年に記録した6600件の30分の1に激減した。
人権団体による批判にもかかわらず、ブケレ氏の支持率は80~90%で推移。最新の世論調査によると、回答者の9割以上がギャング掃討作戦を支持しているという。
市民は何年もの間、国内の広範囲を支配し、殺人、強盗、誘拐、恐喝など生業にしてきたギャングに怯えながら生活していた。
人権団体は非常事態令を解除するよう求めているが、ブケレ氏はまだギャングの残党が残っているとして、解除に否定的な姿勢を示している。