◎政府報道官は記者団に対し、「ギャングとの戦いは最後のギャングが捕まるまで続く」と語った。
2022年10月7日/エルサルバドル、首都サンサルバドル郊外のソヤパンゴ、一斉取り締まりで逮捕された人々(Moises Castillo/AP通信)

エルサルバドル議会は15日、ブケレ(Nayib Bukele)大統領が発令したギャング非常事態令の期間を1か月延長した。

ブケレ氏は昨年3月、ギャング関連の殺人事件が多発したことを受け、非常事態を宣言。刑法を改正するなどしてギャングの取り締まりを強化した。

それ以降に逮捕されたギャングまたはギャングと疑われる市民は6万4000人を超え、そのうち約5万7000人が裁判を受けることなく刑務所に仮収容されている。

非常事態令により、警察の権限は大幅に強化され、さらに結社の自由や弁護人を選任する権利などが制限され、警察は令状なしで家宅捜索を行ったり被疑者を拘束できるようになった。

また刑法改正により、ギャングに所属し逮捕された幹部の懲役刑は6年以上9年以下から「40年以上45年以下」、その他の構成員は3年以上5年以下から「20年以上30年以下」に引き上げられた。

政府報道官は記者団に対し、「ギャングとの戦いは最後のギャングが捕まるまで続く」と語った。

議会は14日遅く、賛成67ー反対6で非常事態令の延長を採択した。8人が棄権、3人が欠席した。

人権団体はギャングと疑われる市民まで逮捕・虐待されていると批判しているが、国民の大多数はこの取り組みを支持しているようにみえる。

エルサルバドルには中米最大のギャング「マラ・サルバトルチャ(通称MS-13)」の拠点がある。このギャングの構成員は7万人と推定され、長い間、同国の広い範囲を支配し、殺人や強盗を繰り返してきた。

非常事態令以降に逮捕されたギャングまたはギャングと疑われる市民は6万4000人を超えたものの、裁判はほとんど進まず、5万7000人以上が刑務所に仮収容されている。

人権団体は拘束中に数十人が死亡するなど、治安当局による虐待が広がっているとして批判している。

しかし、ブケレ氏はギャングを取り締まったおかげで暴力事件が急減し、ギャングに支配されていた地域の住民が生まれ故郷に戻りつつあると指摘。人権団体の批判を退けている。

エルサルバドルの昨年の殺人件数は495件となり、ここ数十年で最少を記録した。2015年の件数は6656件に達し、世界で最も危険な国という不名誉な称号を獲得した。

政府は今月初めに4万人を収容できる新たな巨大刑務所を初公開している。

政府報道官はそこに収容されたギャングについて、「善良な市民が生活するコミュニティーに戻ることはない」と語った。

2022年3月30日/エルサルバドル、首都サンサルバドルの刑務所(Getty Images/AFP通信/PAメディア)
アフィリエイト広告
スポンサーリンク