◎ブケレ大統領は昨年3月、ギャング関連の殺人事件が多発したことを受け、非常事態を宣言。刑法を改正するなどしてギャングの取り締まりを強化した。
2023年2月2日/エルサルバドル、中部テコルカ、4万人を収容できる刑務所の内部(Salvador Melendez/AP通信)

エルサルバドル政府は2日、ギャング掃討作戦の一環として建設を進めてきた「メガプリズン」を公開した。

ブケレ(Nayib Bukele)大統領は昨年3月、ギャング関連の殺人事件が多発したことを受け、非常事態を宣言。刑法を改正するなどしてギャングの取り締まりを強化した。

それ以降に逮捕されたギャングまたはギャングと疑われる市民は6万2000人を超えたと報告されている。

一部の人権団体はギャングと疑われる市民まで逮捕・虐待されていると批判しているが、国民の大多数はこの取り組みを支持しているようだ。

非常事態令により、警察の権限は大幅に強化され、さらに結社の自由や弁護人を選任する権利などが制限され、警察は令状なしで家宅捜索を行ったり被疑者を拘束できるようになった。

また刑法改正により、ギャングに所属し逮捕された幹部の懲役刑は6年以上9年以下から「40年以上45年以下」、その他の構成員は3年以上5年以下から「20年以上30年以下」に引き上げられた。

ブケレ氏は今週、中部テコルカで建設が進められていた刑務所の完成を祝い、メディアに初公開した。収容人数は最大4万人。地元のアナリストは「収容率を無視」すれば10万人近くを収容できると見積もっている。

「テロリスト監禁センター」と名付けられたこの刑務所には、当局に逮捕されたギャング数万人が収容される予定だ。

SNSにはメガプリズンの完成を祝う投稿が多数寄せられている。あるツイッターユーザーはこの刑務所を「屠畜場」と呼び、ギャングをひとり残らず屠殺するようブレケ氏に要請した。

エルサルバドルには中米最大のギャングであるマラ・サルバトルチャ(通称MS-13)の拠点がある。このギャングの構成員は7万人と推定され、長い間、同国の広い範囲を支配し、殺人や強盗を繰り返してきた。

ブケレ氏は2日のツイートで有権者に政府の実績をアピールした。「エルサルバドルは世界で最も危険な国から、アメリカ大陸で最も安全な国になりました。どうやったかって?犯罪者を刑務所に入れたんです。スペースはあるかって?今はあります」

エルサルバドルの年間殺人事件数は2015年の6656件でピークに達し、世界で最も危険な国という不名誉な称号を獲得した。

しかし、昨年の件数は3495件まで減少し、ここ数十年で最も少なくなった。

政府が前回、刑務所の収容人数を公表したのは2021年4月で、約3万6千人だった。その時、国内の29の刑務所の収容率は120%に達していた。

警察はこの10カ月で収容者数を3倍近くに増やした。

政府報道官はメガプリズンの見学会で「各独房に100人以上を収容できる」と語った。運用開始日は明らかにしてない。

ブケレ氏の政策を批判する人権団体は「逮捕・投獄を続けても治安の問題を解決することはできない」と主張している。

首都サンサルバドルに拠点を置く非政府組織WOLAの代表はツイッターに、「ブレケ政権は犯罪を恒久的に減らす政策を持っておらず、取り締まりに頼っている」と投稿した。「ブケレは人権侵害で誤った平和を構築しようとしています...」

サンサルバドル大学の学長は刑罰に焦点が当たっていることに懸念を表明した。「多くの受刑者が狭い独房に押し込まれ、冷たいコンクリートの床で寝ています。そこに犯罪から抜け出したいと思っている囚人を助けるものはありません」

WOLAのような人権団体は出所したギャングのその後に疑問を呈している。

しかし、ブケレ氏は批判者をギャングの擁護者と断じている。最新の世論調査によると、回答者の9割近くがギャング掃討作戦を支持している。

国民はギャングのいない町、殺人のない日が来ることを願っているようだ。何年もギャングの支配下に置かれた地域は解放され、そこから逃れた住民も戻ってきている。

エルサルバドル議会は毎月、非常事態令の期間を延長している。

世論調査によると、ギャングに同情すると回答した人は1割に満たない。ギャングは長年、主に地方で殺人や強盗を繰り返してきた。

最高裁は2015年、マラ・サルバトルチャとパリオ18をテロ組織に認定した。

2023年2月2日/エルサルバドル、中部テコルカ、4万人を収容できる刑務所の内部、暴動に対処する機動隊の待機室(Salvador Melendez/AP通信)
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