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エルサルバドル政府がxAIと提携、公立学校にAI導入へ

ブケレ大統領はこの取り組みを通じて、AIを活用した教育改革を進め、全国の教育の質を高めるとしている。
中米エルサルバドルのブケレ大統領(Getty Images)

中央エルサルバドル政府は11日、米国の実業家マスク(Elon Musk)氏が設立した人工知能企業「xAI」と提携し、同国の公立学校約5000校にAI技術を導入する計画を発表した。

ブケレ(Nayib Bukele)大統領はこの取り組みを通じて、AIを活用した教育改革を進め、全国の教育の質を高めるとしている。

xAIが開発したAIチャットボット「Grok(グロック)」は各生徒の学習進度や理解度に応じた個別指導を提供することになり、今回の提携ではこのGrokを5000校以上に展開し、100万人を超える学生を対象とする「パーソナライズド学習」を実現するとしている。

教育現場では教員の補助ツールとしてAIが活用され、生徒一人ひとりのニーズに合わせた支援が可能になるとのこと。

ブケレ氏は声明で、「エルサルバドルはAI主導型の教育を先導する国になる」と強調。国の教育システム全体を技術革新の最前線に置く意向を示した。

マスク氏も声明を出し、エルサルバドルとの提携を通じて「次世代に最先端のAIを直接届ける」と述べ、世界的なAI教育の標準づくりに寄与すると強調した。

この計画は2年間かけて行われ、、都市部のみならず農村部を含む全国の学校にAIが導入される予定だ。Grokは単に授業の補助だけでなく、教師の負担軽減や教材作成の支援なども期待されている。また、AIの教育利用に関する新たなデータセットや運用フレームワークの開発も共同で進められるという。

ブケレ政権はテクノロジーの活用に積極的であり、2021年にはビットコインを法定通貨として採用するなど、国際的にも先進的な政策を打ち出してきた。今回のAI教育導入もその一環であり、教育格差の是正や学習成果の向上につなげる狙いがある。

一方で、教育現場やAI専門家の間では懸念の声もある。AIの教育利用は教師の補助にはなるものの、生徒の思考力や創造力の育成を阻害する可能性が指摘されている。また、Grokは過去に不適切な発言をした例があり、AIの安全性や情報の正確性に関する課題も議論されている。xAI側はこれらの問題に対処し、改善を進めていると説明しているが、導入に当たっては慎重な運用が求められるとの声が根強い。

教育関係者の一部は、AIが教育現場に与える影響について、「生徒の学習を個別最適化する可能性と同時に、教育の質そのものや教師の役割の変化といった広範な課題への対応が必要だ」と指摘している。特に発展途上国でのAI導入は先進国と異なる環境下で進められるため、技術だけでなくインフラ整備や教員の研修など総合的な支援体制の構築が不可欠になるとの意見もある。

エルサルバドル政府とxAIは今後、AI導入の具体的な計画を詰め、2026年以降の実装に向けた準備を進める方針だ。教育のデジタル化とAI活用は世界的な潮流となっており、中南米諸国での先駆的モデルとなるか注目が集まっている。

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