◎ドミニカ政府は昨年、ハイチ移民17万4000人以上を強制送還。今年上半期の送還者は約6万7000人となっている。
中米ドミニカ共和国が8日、国内に不法滞在しているハイチ移民約1万1000人の強制送還手続きを完了したと明らかにした。
同政府は先週、毎週最大1万人のハイチ移民を本国に送還すると発表していた。同国がこの規模の送還を行うのは初めて。
アビナデル(Luis Abinader)大統領はハイチの不法移民が激増していることを受け、この決定を下したとしている。
この発表を受け、ハイチ暫定政府は米州機構での緊急会議を要請。ハイチ代表のトーマス(Gandy Thomas)氏は強制送還を「民族浄化」と呼び、「国籍と肌の色による差別キャンペーンだ」と非難した。
またトーマス氏は対話と敬意ある解決策を求め、「強制送還はハイチの脆弱なインフラを悪化させる」と警告した。
さらに、「ドミニカから追放された人々の一部はギャングが支配する地域に戻ることを余儀なくされる」と述べた。
国連によると、少なくとも50万人のハイチ人がドミニカで生活している。
ハイチの治安は2021年7月のモイーズ(Jovenel Moise)大統領暗殺と同年8月に西部で発生したM7.2の大地震で崩壊し、破壊と暴力が蔓延している。
首都ポルトープランスでは1年半ほど前から複数のギャングが地域の支配権をめぐって血みどろの抗争を繰り広げている。
ポルトープランスの80%がギャングの支配下に置かれ、市内の学校、企業、公共機関はほぼ全て閉鎖。2つの主要刑務所もギャングの攻撃で崩壊し、4000人以上の受刑者が脱獄した。
人権団体はこの強制送還により、数万人の命が危険にさらされると警告。今年初めに始まった国連支援ミッションは資金と人員不足に直面している。
ハイチ暫定評議会は声明でドミニカを批判。「多くのギャングが、まるで獲物を狙う鳥のように、移民を狙っている」と警告した。
OASのドミニカ代表は8日、ハイチ移民が暴力、虐待、嫌がらせに直面しているというハイチ当局の告発を否定。「政府はハイチ人を含む移民への暴力を容認せず、すべての苦情を真剣かつ真摯に調査し、必要な措置を講じている」と述べた。
またドミニカ代表は「ハイチの危機がドミニカに不釣り合いな影響を及ぼしている」と指摘。「不法移民が学校、診療所、病院に押し寄せ、市民生活に深刻な影響を与えている」と述べた。