◎投票日は19日。大統領選と議会選に注目が集まっている。
中米ドミニカ共和国で今週末、総選挙が行われる。
最新の世論調査によると、国内情勢より隣国ハイチの暴力に争点が移りつつあり、移民対策に力を入れる候補が支持を集めているという。
投票日は19日。大統領選と議会選に注目が集まっている。
再選を目指す現職のアビナデル(Luis Abinader)大統領はハイチ国境沿いにトランプ(Donald Trump)前米大統領のような「国境の壁」の建設を開始。昨年は17万5000人ものハイチ移民を強制送還した。
アビナデル氏は先月の討論会で、「私たちはどこの国から来た不法滞在者であれ、全員を強制送還し続ける」と強調した。「そうしなければ、この国はカオス状態になります...」
またアビナデル氏は次の任期中に国境の壁建設を終わらせると約束した。
他の対立候補もアビナデル政権の移民対策を支持しているように見える。
国連やNGOはドミニカ当局の取り締まりがギャングの支配下に置かれるハイチの危機に拍車をかけていると指摘。移民を積極的に受け入れるよう要請してきた。
しかし、政府与党はこの10数年、移民を厳しく取り締まってきた。
議会選に立候補している一部の野党候補はアビナデル氏の移民対策に異議を唱え、人権を尊重しながら取り締まる必要があると有権者に訴えている。
ある候補はSNSにこう投稿し、数千のいいねを集めていた。「我々は国境警備を強化し、不法移民の入国を防いだうえで、不法滞在者の人権を配慮しながら強制送還します...」
ハイチの治安は2021年7月のモイーズ(Jovenel Moise)大統領暗殺と同年8月に西部で発生したM7.2の大地震で崩壊し、破壊と暴力が蔓延している。
ポルトープランスでは1年ほど前から複数のギャングが地域の支配権をめぐって血みどろの抗争を繰り広げている。
ポルトープランスの推定80%がギャングの支配下に置かれ、市内の学校、企業、公共機関はほぼ全て閉鎖。2つの主要刑務所もギャングの攻撃で崩壊し、4000人以上の受刑者が脱獄した。
この1年で国外に逃れたハイチ人は数万人と推定されている。
ハイチはここ数十年の慢性的な政情不安、独裁政権、自然災害などにより、アメリカ大陸で最も貧しい国のひとつとなっている。2010年の大地震では20万人以上が死亡、その復興が進まぬ中、21年に地震が発生した。