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キューバ大停電、首都ハバナの8割通電、復旧作業進む

キューバで停電が常態化している背景にはエネルギー供給構造の脆弱性、老朽化したインフラ、燃料輸入依存、さらに米国の経済制裁による影響などが複合的に絡み合っている。
2025年9月10日/キューバ、首都ハバナの通り(ロイター通信)

キューバ共産党は11日、首都ハバナの80%が通電し、国内の電力網の大部分が復旧したと発表した。

同国では10日に大規模停電が発生。ハバナの中心部を除くすべての地域が停電した。

共産党の電力局長は国営テレビの朝の情報番組で「電力供給範囲は拡大しており、現在約1000メガワット(MW)を発電中。本日中にさらに増加する見込み」と説明した。

また局長は「復旧作業は順調に進んでいる。電力システムの復旧は最終段階にある」と述べた。

キューバはパンデミック以来、史上最悪の経済・エネルギー危機に直面しており、計画停電が常態化。1日数時間は当たり前、長い時は15時間を超える。

全土が停電に見舞われたのは今年2回目。昨年末にも3回報告されている。

キューバで停電が常態化している背景にはエネルギー供給構造の脆弱性、老朽化したインフラ、燃料輸入依存、さらに米国の経済制裁による影響などが複合的に絡み合っている。

まず、キューバの電力供給は長年にわたり火力発電に大きく依存してきた。主力となってきたのは石油火力発電所であるが、その多くは旧ソ連時代に建設された設備であり、30年以上稼働しているものも多い。設備の老朽化は深刻で、効率の低下や頻繁な故障を招き、安定的な発電を難しくしている。定期的なメンテナンスや更新が必要であるにもかかわらず、資金不足や部品調達の困難さから十分な整備が行われず、発電能力の低下が慢性化している。

次に、燃料調達の問題がある。キューバは自国での石油生産が限られており、主にベネズエラからの輸入に依存してきた。しかし、ベネズエラ自体が経済危機と政治的混乱に直面し、原油の対外供給を維持する余力が縮小したため、キューバへの供給も不安定化した。代替的に他国から輸入しようにも、米国の経済制裁が金融取引や輸送の妨げとなり、安定した燃料確保は難しい状況にある。とりわけトランプ政権下で制裁が強化され、船舶が米国の制裁リスクを避けて寄港を敬遠するようになったことが、燃料不足を一層深刻化させた。

さらに、発電所の多くは石油由来の燃料油に依存しており、天然ガスや再生可能エネルギーの導入は限定的である。そのため燃料供給の変動が直ちに電力供給の不安定化につながる構造となっている。これに加えて送電網自体も老朽化しており、長距離の送電に伴う電力ロスや頻発する送電障害が停電を助長している。台風や豪雨などの自然災害がインフラに打撃を与えると、その復旧にも時間がかかる。

国内経済の停滞もこの問題を悪化させている。観光業は長らく外貨収入の柱であったが、新型コロナのパンデミックにより大打撃を受け、国家財政の逼迫を招いた。結果としてエネルギー部門への投資余力が限られ、老朽設備の更新もままならない。国営企業が独占的に電力を担っているが、効率性や柔軟性に欠け、改善策の導入も遅れている。国民生活では計画停電が日常化し、病院や学校、交通など社会基盤に深刻な影響を及ぼしている。冷蔵庫の停止による食品の劣化や水の供給不安も市民の不満を高め、抗議活動に発展する事例も見られる。

共産党は再生可能エネルギー導入を掲げ、太陽光や風力、バイオマスの発電プロジェクトを進めているものの、その比率は未だ低く、即効性に欠ける。国際的な協力を通じて一部の設備更新も行われているが、資金調達や技術移転が制裁や政治的制約によって滞りがちである。

キューバの停電常態化は技術的要因と国際政治的要因の双方に根ざしている。老朽化設備と制裁による燃料不足が構造的な問題を生み出し、国内経済の低迷が改善を阻んでいる。中長期的にはエネルギー源の多様化や再生可能エネルギーへの転換が不可欠だが、現状では資金と技術の制約が強く、停電問題の早期解決は困難な状況が続いている。

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