コスタリカ大統領の「免責特権」剥奪法案否決、刑事告発免れる
検察庁は7月、選挙資金の不正な調達に関する告発状を提出し、最高裁判所に対し、チャベス氏の免責特権を剥奪し、裁判にかけるよう求めた。
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コスタリカ議会(一院制、定数57)は23日、チャベス(Rodrigo Chaves)大統領の免責特権をはく奪する法案を否決した。
検察庁は7月、選挙資金の不正な調達に関する告発状を提出し、最高裁判所に対し、チャベス氏の免責特権を剥奪し、裁判にかけるよう求めた。
チャベス氏は疑惑を否定。この動きを「検事総長と最高裁による政治的報復」と呼んだ。
大統領の免責特権剥奪には3分の2以上の賛成が必要であったが、21人の議員が反対票を投じ、さらに2人が欠席。これにより、法案は否決された。
同国で現職大統領に対する免責特権剥奪の採決が行われたのは初めてであった。
チャベス氏は23日、賛成票を投じた議員や最高裁判事を激しく非難。一連の騒動を「政治的な見せ物」と表現した。
コスタリカにおける大統領の「免責特権剥奪」は、同国憲法が規定する統治機構と権力分立の原則に基づいて理解されるべき制度である。コスタリカの憲法では、大統領は国家元首かつ政府の長として広範な権限を持つが、その一方で法の下の平等と責任を確保するために、在任中の刑事責任追及について特別な規定が置かれている。大統領には任期中、一定の刑事免責が与えられており、通常の司法手続きによって直ちに訴追されることはない。この制度は、大統領が政治的圧力や恣意的な訴追によって執務を妨害されることを防ぐ目的を持つ。
しかし、この免責は絶対的なものではなく、特定の条件下で「免責特権剥奪」が可能となる。具体的には、大統領が汚職、権力乱用、選挙法違反、あるいは人権侵害といった重大な不法行為を行ったとされる場合、議会が大統領の免責を剥奪する手続きに入ることができる。この手続きは単なる政治判断ではなく、司法機関の意見を踏まえた厳格な手続を経て行われる。まず最高裁が告発の妥当性を審査し、その後、議会が採決を行い、免責を解除する。この決定が下されれば、大統領は一般市民と同様に刑事訴追を受ける立場に置かれる。
この仕組みは、強大な権限を持つ行政府の長に対して法的責任を免れさせないための安全装置として機能する。コスタリカは中南米諸国の中でも比較的安定した民主主義と法治主義を維持してきた国であり、こうした免責剥奪の仕組みは、権力の集中を抑制し、腐敗防止や透明性の確保に資するものとされている。実際、過去には元大統領が免責終了後に汚職事件で訴追された例もあり、大統領といえども法の支配から逃れられないという原則が社会に浸透している。