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コスタリカ当局、亡命中のニカラグア元幹部殺害で4人逮捕

ニカラグア軍の元幹部であるロベルト・サムカム氏は6月19日朝、コスタリカ・サンホセ北東部の団地で何者かに拳銃で撃たれ、死亡した。
コスタリカ北部、ニカラグア国境近くを巡回する機動隊員(ロイター通信)

コスタリカ当局は12日、隣国ニカラグアの独裁政権を批判していた退役軍人が今年6月に殺害された事件に関与したとして、4人を逮捕したと明らかにした。

ニカラグア軍の元幹部であるロベルト・サムカム(Roberto Samcam、67歳)氏は6月19日朝、コスタリカ・サンホセ北東部の団地で何者かに拳銃で撃たれ、死亡した。

地元メディアによると、犯人は配達員を装ってサムカム氏に近づき、少なくとも8発撃った後、バイクで逃走したという。

サムカム氏はサンディニスタ民族解放戦線(FSLN)の元大佐で、オルテガ(Daniel Ortega)大統領を独裁者と呼び、2018年の反政府デモに参加した後、ニカラグアを離れた。国連はこのデモで少なくとも350人が死亡、数千人が勾留されたと報告している。

コスタリカ当局は12日、捜査官がサンホセ北部の地域で3件の家宅捜索を実施し、3人を逮捕したと発表。もう1人は11日、サンホセ郊外の別の地区で逮捕された。

当局は声明で、「4人のうち1人がこの暗殺を企てた組織もしくは個人に3人を紹介したとみられる」と述べた。

4人のうち1人は実行犯とみられる20歳の男。もう1人は現場から逃走したバイクの運転手とされる。

仲介役の恋人も拘束されているとのこと。

当局は事件の首謀者や外国勢力の関与の有無について、「まだ特定できていない」と述べた。

ニカラグアの人権状況は近年著しく悪化し、国際社会から広く批判されている。とくに、オルテガ氏による権威主義的な統治が強まり、政治的反対派や市民社会に対する弾圧が常態化している点が大きな懸念材料である。

2018年に発生した反政府抗議運動に対し、政権は警察や親政府武装集団を使って強硬に対応し、多くの死傷者と拘束者を出した。国際人権団体によると、この弾圧では恣意的な逮捕、拷問、強制失踪、過剰な武力行使などが行われたとされており、国家による重大な人権侵害と評価されている。

言論・報道の自由も大きく制限されており、独立系メディアの閉鎖、記者の逮捕、国外追放が相次いでいる。政権に批判的なニュースサイトやラジオ局は次々と免許を取り消され、政府系メディアによる情報統制が強まっている。SNSやインターネット上の発言も監視されており、市民が自由に意見を表明する空間は急速に縮小している。

選挙の自由も深刻に損なわれている。2021年の大統領選挙では、有力な野党候補者が次々と逮捕・起訴され、選挙への出馬を阻止された。選挙は国際的に「自由でも公正でもない」と批判され、EUや米国、カナダなどは選挙結果を認めず、制裁措置を講じた。

市民社会団体、NGO、宗教団体も政権の標的となっており、多くの団体が法的根拠なく登録を取り消され、活動を禁じられている。とくにカトリック教会に対する弾圧は激しく、聖職者の逮捕や国外追放が行われており、宗教の自由すら保障されていない現状にある。

さらに、2023年以降、政治犯や反体制活動家の国籍剥奪、国外追放が進められた。数百人におよぶニカラグア人が一方的に国籍をはく奪され、難民として他国での保護を求めざるを得ない状況となっている。これは国際人権法が保障する無国籍化の禁止原則にも違反する行為とされ、国連や人権委員会が非難している。

先住民族や農民に対する土地の収奪や暴力も報告されており、環境活動家や土地権利擁護者への攻撃が後を絶たない。とくに鉱山開発や大規模農園に関連する土地紛争では、政府とつながる民間武装勢力が先住民コミュニティを脅迫・排除するケースも確認されている。

ニカラグアの人権状況は全体として「抑圧的」「非民主的」と評価されており、基本的人権、表現の自由、集会の自由、選挙権、法の下の保護などが体系的に侵害されている。国際社会の批判や制裁にもかかわらず、オルテガ政権は強権路線を維持しており、今後の改善は極めて不透明なままである。

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