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ベネズエラ産原油断たれたキューバ、不安の声も トランプ圧力

トランプ政権はベネズエラ産原油のキューバへの流れを阻止すると明言し、これまで同国最大の供給源だったベネズエラからの原油・燃料輸送は昨年12月以降途絶しているとみられる。
キューバ、首都ハバナの通り(ロイター通信)

キューバは現在、トランプ(Donald Trump)米大統領がベネズエラからの原油供給を事実上停止したことで深刻なエネルギー危機に直面している。トランプ政権はベネズエラ産原油のキューバへの流れを阻止すると明言し、これまで同国最大の供給源だったベネズエラからの原油・燃料輸送は昨年12月以降途絶しているとみられる。輸送データやベネズエラ国営石油会社PDVSAの内部文書によると、昨年末に積み出された最後の原油貨物は60万バレル強で、輸送用タンカーは位置情報送信装置をオフにして航行していたという。ベネズエラからの供給停止は、米国による封鎖強化やマドゥロ(Nicolas Maduro)大統領の拘束といった一連の動きが背景にあるとみられる。

ベネズエラは2025年に1日当たり約2万6500バレルの原油をキューバに供給し、同国が必要とする燃料の約3分の1を占めていた。メキシコからの輸入は同約5000バレルにとどまり、他の輸入相手国からの支援は限定的だ。こうした状況下で、キューバ政府は燃料不足の影響を抑えようと努力しているものの、地方では既に停電や燃料不足が日常化しつつある。農村部の住民は電力が不安定で、調理に木炭を使うなど19世紀の生活様式を思わせる状況になっているとの声もある。

キューバのディアスカネル(Miguel Diaz-Canel)大統領はトランプ政権の圧力に強硬な姿勢で対抗している。「誰も我々に何をするか指図できない。キューバは最後の一滴の血まで祖国を守る準備がある」と述べ、米国による圧力に屈しない姿勢を強調した。だが専門家は、輸入燃料が途絶したままでは数カ月以内に「壊滅的な事態」に陥る可能性があると警告している。

首都ハバナではまだベネズエラからの燃料供給減の全面的な影響は表面化していないものの、日々の電力供給に赤字が出ているとの指標もある。都市部でも停電が継続的に発生し、特に地方や周辺地域での生活インフラの脆弱性が浮き彫りになっている。ガソリンや軽油の供給は配給制で続いているものの、供給量は大幅に減少している。

一方で、キューバがどれだけの燃料備蓄を保持しているかについて公的な情報はなく、今後の見通しは不透明だ。支援国の動向も注目されているが、アンゴラやアルジェリア、ブラジルといった主要な石油輸出国からの支援はほとんど見られず、メキシコやロシアからの限定的な支援があるのみだという。メキシコからの燃料貨物が週末に到着したものの、ベネズエラからの輸送量に比べればごくわずかであり、国全体の燃料需要を満たすには程遠い。

キューバ市民からは先行きへの不安の声が上がっている。ハバナ在住の起業家は「何が起こるか分からない不確実性が非常にストレスだ」と語り、政府や米国の次の行動を予測できないことへの懸念を示している。燃料不足は電力だけでなく、食料や医薬品の流通にも影響を及ぼし、既に厳しい生活環境を一段と悪化させる恐れがある。

トランプ政権はベネズエラからの原油を米国向けに振り向ける意向を示しており、これがキューバに対する圧力をさらに強める構えだ。米国が今後もキューバへの燃料供給を実質的に封じる政策を維持すれば、長期的な経済困難と社会的緊張の高まりを避けられないとの見方が広がっている。

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