◎チリ史上最年少の国家元首誕生。左派のガブリエル・ボリッチ下院議員(35歳)
12月20日、チリの大統領選挙を制したガブリエル・ボリッチ下院議員(35歳)は貧困と不平等を解消し、国を大きくリメイクすると誓った。
ボリッチ氏はチリ大学学生連盟を率い、2013年の下院選挙で初当選を果たしたミレニアル世代で、チリ史上最年少の国家元首になる予定。
選挙管理当局によると、ボリッチ氏は極右のホセ・アントニオ・カスト氏に100万票以上の差をつけ、国の最多投票記録を更新したという。
<チリの大統領選挙 第1ラウンド:11月21日>
・ホセ・アントニオ・カスト 1,961,779票(27.91%)
・ガブリエル・ボリッチ 1,815,024票(25.82%)
以下省略
<チリの大統領選挙 第2ラウンド:12月19日 開票率100%>
・ホセ・アントニオ・カスト 3,649,647票(44.13%)
・ガブリエル・ボリッチ 4,620,671票(55.87%)
ボリッチ氏は首都サンティアゴの支持者に自由主義経済を抑制し、民主主義を守りながら国民の生活を改善すると約束した。
ボリッチ氏は演説の中で、「謙虚さと途方もない責任感を持って仕事に取組み、特権を持つ者たちと戦う」と述べ、喝さいを浴びた。
ボリッチ氏の左派政党ADと敗れたアントニオ・カスト氏の極右FSCはどちらも政権を握ったことがなく、選挙期間中、全く異なるビジョンを示していた。なお、国民議会の第1党である中道右派連合チリバモスが擁立した候補は第1ラウンドで4位に終わった。
チリの経済は堅調に推移しているが、所得格差が深刻な社会問題になっている。国連によると、人口の約1%が国の富の25%を保有しているという。
ボリッチ氏は年金および医療制度を改革し、労働時間を週45時間から40時間に短縮し、再生可能エネルギー分野への投資を加速させ、不平等に立ち向かうと約束した。「私たちは多くの国民が厳しい生活を余儀なくされていることを知っています。私たちは不平等を許しません...」
またボリッチ氏は進行中の鉱業プロジェクトを阻止し、気候変動問題に立ち向かうと誓った。
地元メディアによると、チリの通貨(ペソ)はボリック氏の勝利確定後、米ドルに対して過去最低を記録し、株式市場は約10%落ち込んだという。特に鉱業株の落ち込みは顕著だった。
世界最大の銅生産国であるチリの鉱業プロジェクトは国の経済に大きな影響を与える事業のひとつと見なされている。
一部の投資家は高所得層に対する増税と、再生可能エネルギー分野以外を狙い撃ちにする規制強化に懸念を表明した。
2019年の爆発的な抗議の舞台になったサンディアゴでは、ボリッチ氏の勝利を祝うイベントが各地で開催された。若い支持者は雄たけびを上げ、国旗を振り回し、ある支持者は火を噴いた。
AP通信の取材に応じた教師のボリス・ソト氏は、「私たちはファシズム、右翼、そして恐れを打ちまかした」と語った。「今日は歴史的な日です!」
米国のラテンアメリカプログラムの責任者であるウィルソン・センター(シンクタンク)のシンシア・アーンソン氏はソーシャルメディアに、「チリの民主主義が勝った」と投稿した。
一部の専門家は「左派の勝利は決まっていた」と指摘している。2019年の輸送費引き上げに伴うサンティアゴの抗議は全国に拡大し、1年後、議会は独裁政権時代に施行された憲法を大きく改正した。
1973年から1990年まで権力を握った独裁者のアウグスト・ピノチェト将軍は期間中、反対勢力の政治家など少なくとも3,000人以上を殺害または追放したと伝えられている。
決選投票で敗れたアントニオ・カスト氏は法と秩序の上に立ち、税金を削減すると有権者に訴えたが、左派の勢いに屈した。
アントニオ・カスト氏は19日、ボリック氏に勝利を祝福する電話をかけたとツイートした。
一方、保守派の現職セバスティアン・ピニェラ大統領は声明で、「チリでは極度の二極化と対立が進んでいる」と懸念を表明し、ボリッチ氏に「全国民の大統領」になるよう促した。
ボリッチ氏は2022年3月11日に就任する予定。チリの大統領の任期は4年で再選不可。