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ハイチ中部でギャング暴力激化、自警団が応戦、流血沙汰に


攻撃を行ったのは同地域の最大勢力であるギャング「グラン・グリフ(Gran Grif)」で、路上に遺体が散乱し、炎上する家屋の映像もSNSで確認された。
2026年3月3日/ハイチ、首都ポルトープランスの通り(AP通信)

ハイチ中部アルティボニット県で武装ギャングと自警団の衝突が激化し、住民を巻き込む大規模な流血事件に発展した。地元当局や報道によると、襲撃は29日の早朝に発生し、複数の死者が出たほか、住宅が焼き払われるなど深刻な被害が確認されている。

攻撃を行ったのは同地域の最大勢力であるギャング「グラン・グリフ(Gran Grif)」で、路上に遺体が散乱し、炎上する家屋の映像もSNSで確認された。正確な死者数は明らかになっていないが、戦闘が勃発したスラム街は恐怖に包まれ、地域社会が機能不全に陥っている。

この衝突の背景には近年ハイチ全土で拡大するギャング支配と、それに対抗する自警団の台頭がある。2023年ごろから各地で住民主体の武装集団が結成され、ギャングに対抗する動きが広がった。しかし彼らは石打ちや斬首、生きたまま焼き殺すなど過激な手段を用いることもあり、暴力の連鎖をさらに激化させている。

グラン・グリフはアルティボニット県を含む中部地域で圧倒的な影響力を持ち、国連によると、同地域の民間人死者の大半に関与しているとされる。レイプ、拷問、誘拐、住民の強制移動などの残虐行為も報告され、地域の治安崩壊を象徴する存在となっている。

ハイチでは2021年のモイーズ(Jovenel Moise)大統領暗殺以降、国家統治が弱体化し、ギャングが急速に勢力を拡大した。首都ポルトープランスの大部分がギャング連合「ヴィヴ・アンサム(Viv Ansam)」の支配下に置かれるなど、治安危機が長期化している。地方でも同様の傾向が広がり、これまで比較的平穏とされた中部地域にも暴力が波及している。

国連は治安回復のため多国籍部隊の派遣などを進めているが、十分な成果は上がっていない。国連報告では、ギャングは依然として勢力を拡大し、数百万人規模の住民が避難を余儀なくされている。

今回の事件は国家の統治能力の低下と非国家主体による暴力の拡散が同時進行するハイチの現状を浮き彫りにした。ギャングと自警団の双方が暴力をエスカレートさせる中、一般市民が最大の犠牲者となる構図が続いている。治安回復には単なる武力対策にとどまらず、政治的安定と社会基盤の再建が不可欠である。

米政府はグラン・グリフとヴィヴ・アンサムを外国テロ組織に指定している。

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