▽ギャングの暴力が激化する中、ハイチ全土の病院の6割が閉鎖または機能不全に陥っている。
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中米ハイチから隣国ドミニカ共和国に逃れた女性や子供が強制送還されるケースが急増し、国連や人権団体が警鐘を鳴らしている。
ギャングの暴力が激化する中、ハイチ全土の病院の6割が閉鎖または機能不全に陥っている。
首都ポルトープランスの大部分を支配するギャング連合「ヴィヴ・アンサム(Viv Ansam)」は今週、中部ミバレの国立病院を襲撃。これにより、同院は閉鎖に追い込まれた。
この国立病院の病床数は約300。全国から1日あたり約850人の患者が来院する。
ヴィヴ・アンサムは先月、ミバレへの攻撃を開始し、全域を制圧。刑務所から刑務官を追い払い、約500人の受刑者を解放した。
ミバレはポルトープランスの北東約55キロに位置する。閉鎖された大学病院はコロナ患者の受け入れから高度ながん治療まで、難しい症例にも比較的安価な価格で治療を提供してきた。
国連によると、ミバレの周辺にある2つの病院は医薬品などの物資が不足し、患者の受け入れを制限しているという。
ミバレの国立病院が閉鎖されて以来、この2つの病院は銃創、栄養失調、コレラなど、200人以上の患者を治療してきた。
国連のデュジャリック(Stephane Dujarric)報道官は25日、「ドミニカからハイチに強制送還された人々の多くは何も持っていない女性や子供であり、行き場がなく、路頭に迷っている」と述べた。
国連の専門機関である国際移住機関(IOM)もこの数週間、ドミニカからハイチに強制送還される女性、妊婦、子供、新生児が急増していると警告した。
IOMは24日の声明で、「適切な医療を受けられない国に妊婦や新生児を強制送還するなど言語道断である」と述べ、ドミニカ政府を非難した。
ドミニカ当局は22日、48人の妊婦と39人の母親および新生児を含む48人の子供をハイチに強制送還した。
23日には妊婦を含むは78人のハイチ移民が不法入国の疑いで逮捕された。
国際人権団体アムネスティ・インターナショナルは26日、アビナデル(Luis Abinader)大統領に対し、ハイチ人が人種差別に直面しているとして、不法移民対策を停止するよう求めた。
アビナデル氏は両国を隔てる国境の壁建設を加速させ、国境監視のために1500人の兵士を追加配備するなど、15の不法移民対策を実行している。
ハイチの治安は2021年7月のモイーズ(Jovenel Moise)大統領暗殺と同年8月に西部で発生したM7.2の大地震で崩壊し、破壊と暴力が蔓延している。
ポルトープランスでは3年ほど前から複数のギャングが地域の支配権をめぐって血みどろの抗争を繰り広げている。大統領のポストは今も空席のままだ。
ポルトープランスの90%がギャングの支配下に置かれ、市内の学校、企業、公共機関はほぼ全て閉鎖。2つの主要刑務所もギャングの攻撃で崩壊し、4000人以上の受刑者が脱獄した。
ポルトープランスと周辺地域の暴力は昨年10月頃から激化。アルティボニット県では地元のギャングが複数の地区を襲撃し、市民少なくとも115人を虐殺した。逮捕者は出ていない。
最新のギャング間抗争は先月初めに勃発。ヴィヴ・アンサムと対立する複数のギャングが民間人を巻き込みながら支配地域の拡大を目指しているとされる。
一連の暴力とギャング間抗争により、100万人以上が住居を失い、その多くが避難所に身を寄せている。
人口約1100万人のドミニカには少なくとも50万人のハイチ人が流入したと推定されている。
人権団体の調査によると、昨年3万3000人近いハイチ人女性がドミニカの病院で出産したという。
アビナデル政権は昨年10月、毎週1万人の不法移民を強制送還するという目標を立て、それ以来、18万人以上を送還してきた。その99.9%がハイチ人で、人権団体は警察が令状なしで家に押し入るなど、移民を虐待していると非難している。