ハイチギャング戦争、今年1~5月末の死者2680人に=国連

ハイチはここ数十年の慢性的な政情不安、独裁政権、自然災害などにより、アメリカ大陸で最も貧しい国のひとつとなっている。2010年の大地震では20万人以上が死亡、その復興が進まぬ中、21年に地震が発生した。
2021年11月11日/ハイチ、首都ポルトープランス(Getty Images)

国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)のターク(Volker Turk)高等弁務官は13日、中米ハイチのギャング暴力により、今年1月から5月末までの間に少なくとも2680人が死亡したと明らかにした。

ターク氏は報告書の中で、「ハイチの危機は新たなレベルに突入し、ギャングが首都ポルトープランスを越えて中央地域に影響力を拡大している」と指摘した

またターク氏は「1月1日から5月末までの間に少なくとも2680人が死亡し、そのうち54人が子供であった」と明らかにした。

この数字は国連が確認できた情報に基づいている。一部の専門家はこれをはるかに上回る市民が死亡または行方不明になっていると指摘している。

ハイチの治安は2021年7月のモイーズ(Jovenel Moise)大統領暗殺と同年8月に西部で発生したM7.2の大地震で崩壊し、破壊と暴力が蔓延している。

ポルトープランスでは3年ほど前から複数のギャングが地域の支配権をめぐって血みどろの抗争を繰り広げている。大統領のポストは今も空席のままだ。

ポルトープランスの90%がギャングの支配下に置かれ、市内の学校、企業、公共機関はほぼ全て閉鎖。2つの主要刑務所もギャングの攻撃で崩壊し、4000人以上の受刑者が脱獄した。

ポルトープランスと周辺地域の暴力は昨年10月頃から激化。アルティボニット県ではグラン・グリフとみられる武装ギャングが複数の地区を襲撃し、市民少なくとも115人を虐殺した。逮捕者は出ていない。

最新のギャング間抗争は3月初めに勃発。ポルトープランスの大部分を支配するギャング連合「ヴィヴ・アンサム(Viv Ansam)」と対立する複数のギャングが民間人を巻き込みながら激しい縄張り争いを繰り広げている。

米政府は先月初め、ヴィヴ・アンサムとグラン・グリフを「外国テロ組織」と「国際テロリスト」に指定した。

国連の専門機関である国際移住機関(IOM)は今週、一連のギャング暴力により、130万人もの市民が避難を余儀なくされていると明らかにした。

ターク氏は報告書の中で、「同期間中に少なくとも957人が負傷、316人が身代金目的で拉致された」と付け加えた。

またターク氏は「ギャングによる性的暴力と子供の徴用も増加傾向にある」と強調した。

国家警察とケニアが率いる国連支援ミッションがギャングへの対応に苦慮する中、自警団とギャングとの戦闘が各地で報告され、多くの人権侵害を引き起こしている。

ターク氏はギャングと自警団との間で起きた戦闘に言及。あるケースでは少なくとも25人がマチェーテで切り殺されたと明らかにした。

暫定大統領評議会は米国の民間軍事会社ブラックウォーターの創設者であるエリック・プリンス(Erik Prince)氏を雇い、ギャングとの戦いを有利に進めようとしている。

ブラックウォーターは2007年のイラク・バグダッドでの民間人虐殺事件などで知られる民間軍事会社。現在は買収を経て、「アカデミ」という社名で活動している。

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