米国の石油供給遮断でキューバのエネルギー危機深刻化、不安広がる
キューバは消費する石油のうち約40%しか国内で生産できず、大部分を輸入に頼っているが、その供給が途絶している。
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米国がキューバ向けの石油を遮断する中、キューバ国内でエネルギー危機が一段と深刻化し、多くの国民が窮地に追い込まれている。キューバのディアスカネル(Miguel Diaz-Canel)大統領は今週、国民に対して今後さらなる犠牲を求める可能性を警告し、市民の間では「これ以上何を犠牲にできるのか」といった声が高まっている。
現地では公共交通機関の運行停止が相次ぎ、日常生活への影響が一段と顕在化している。首都ハバナ在住の64歳男性はAP通信の取材に対し、「通常であれば海岸沿いの地域から市中心部へバスで帰宅できるが、ガソリン不足のためバスが来ず、近くのレストランで一夜を過ごした」と語った。
キューバは消費する石油のうち約40%しか国内で生産できず、大部分を輸入に頼っているが、その供給が途絶している。背景には、トランプ政権が大統領令を発出し、キューバへ石油を供給する国々に対して追加関税の脅しをかけたことがある。これにより伝統的な供給国であったベネズエラが1月に供給を停止し、メキシコも1月下旬に石油の輸出を中止した。
燃料不足は電力供給の不安定化や長時間停電、ガソリンスタンドでの長い列、公共交通の停止など生活全般に影響を及ぼしており、住民の多くが徒歩やヒッチハイクでの移動を余儀なくされている。また、国営バス会社は東部で運行路線を削減、ハバナ大学は「エネルギー不足」を理由に一部の対面授業やイベントの中止・オンライン化を発表した。
ディアスカネル氏は「燃料が一滴も国に届かないとはどういうことか」と述べ、食料の輸送や生産、公共交通、病院や学校、観光や経済活動など、社会の基本的な機能が燃料不足で損なわれていると嘆いた。共産党はこの危機が国民経済に与える影響を強調し、米国の制裁が2024年3月から2025年2月までの1年間で75億ドル以上の損失を与えたと主張している。
市民の間では、現在の状況を1990年代の「特別な時代」に例える声も出ている。これは旧ソ連の支援が途絶して深刻な経済危機に陥った時期で、多くの国民が生活苦に苦しんだ。当時の記憶を持つ人々にとって、現在の燃料不足は当時の困難と重なる部分があるという。
51歳の女性は2人の子を育てる母親として家政婦の仕事に向かうために歩いて移動している。女性はAP通信の取材に対し、「生きるために働くだけだ」と語り、「ここに住み、生まれ育った以上、これが運命だ。子どもを養うために歩かなければならない」と苦しい生活を明かした。
トランプ政権は今週、人道支援として約600万ドルの援助を発表したが、キューバ政府は一連の圧力を「エネルギー封鎖」と非難し、限られた援助では燃料危機の根本的な解消には到底及ばないとしている。国民の不満は高まっており、エネルギー危機が社会不安の要因となる懸念も強まっている。
