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トランプ関税圧力でキューバ絶体絶命、怒りと絶望広がる

トランプ氏は29日遅くに声明を出し、キューバを「失敗国家」と表現。「終わっているように見える」と述べた。
2026年1月30日/キューバ、首都ハバナ、ガソリンスタンドに並ぶ車の列(AP通信)

キューバ全土で30日、トランプ(nald Trump)米大統領がキューバに石油を供給する国に対し関税を課す大統領令を発表したことへの怒りと絶望が広がった。同国では深刻な停電と燃料不足が続き、多くの国民がトランプ氏の大統領令発表(29日)を認識していなかったが、情報が行き渡ると不満と懸念が急速に高まった。

トランプ氏は29日遅くに声明を出し、キューバを「失敗国家」と表現。「終わっているように見える」と述べた。また、石油供給国に対する新たな関税措置によってキューバへのエネルギー供給に圧力をかける意向を示した。 これは米国の対キューバ制裁を強化するもので、市民の暮らしをさらに厳しくすると懸念されている。

首都ハバナでAP通信の取材に応じた男性は「これは戦争だ」と語り、トランプ氏を「世界の保安官」と称しつつ、「何でもありの西部劇のごとく感じる」と批判した。この男性は1990年代のソ連支援削減後に訪れた深刻な経済不況を生き抜いたが、現在の停電や物資不足、燃料危機はそれより深刻だと述べた。

キューバでは現在、燃料不足や老朽化したインフラが原因で日常的に停電が発生し、観光客減や米国の制裁強化、通貨統一を目指した内部金融改革の失敗などが経済危機を深刻化させている。国民は新たな石油供給の制約が状況をさらに悪化させるのではないかと強い不安を抱いている。

路上の市民からも悲嘆の声が上がる。パンや菓子を売る47歳の男性はAP通信に、「もうダメだ、終わりだ」と語り、「キューバが米国にとって脅威だとは信じない。キューバの脅威はキューバ自身、政府が私たちに対する脅威だ」と述べた。そのうえで「結局苦しむのは政府ではなく市民だ」と嘆いた。

燃料供給の先行きについて専門家は懸念を示す。米テキサス大学エネルギー研究所は、キューバが今後4〜8週間以内にタンカーによる燃料輸送がなければ、極めて厳しい状況に陥る可能性があると警告している。ディーゼル燃料はキューバ経済の基盤であり、その不足は電力、輸送、医療など多くの分野に打撃を与える恐れがあるという。

キューバへの石油供給は、かつての主要な同盟国ベネズエラからの輸送が米国の軍事作戦と大統領拘束によって停止されて以降、メキシコやロシアに頼る形となっていた。だが新たな関税措置により、メキシコが供給を見直す可能性が指摘され、国民はさらなる不安に直面している。

多くのキューバ人は停電や物資不足が続くなかで、生活の困難さを痛感している。56歳の溶接工はAP通信に、「トンネルの出口は見えない」と語り、支え合いの必要性を強調した。5歳の息子を持つ母親も日々の停電のなかで子育てに苦労していると語り、トランプ氏の発表を「世界の終わり」と表現した。

今回の動きはキューバが長年直面する経済的・社会的な困難を一段と深刻化させる可能性があり、市民生活に与える影響は極めて大きい。トランプ政権の圧力が果たして目標とする政治的変化につながるのか、それとも国民のさらなる苦境を招くだけなのかは今後の情勢次第である。

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