パナマ運河問題、米中対立の焦点に、最高裁判所の違憲判決
この問題はパナマ運河という世界貿易の要所を巡り、パナマ自身が国内法と国際政治との板挟みになる形で進行していることを浮き彫りにしている。
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パナマ運河両端の主要港が米中対立の焦点となり、パナマ政府が厳しい外交局面に直面している。問題の中心となっているのは太平洋側のバルボア港と大西洋側のクリストバル港で、両港はこれまで香港の複合企業CKハチソン・ホールディングスの現地子会社、パナマ・ポート・カンパニー(PPC)が運営してきた。両港はパナマ運河の貨物輸送において重要な役割を果たし、国内コンテナ貨物の約39%を扱っていたほか、約7000人の雇用を生み出してきた。
ことの発端は1月末にパナマ最高裁が両港の運営権を違憲と判断したことにある。監査院による監査で契約延長に関する不正や政府収入の損失が指摘され、最高裁は1997年から続くコンセッション契約を無効とした。これを受け、パナマ政府は2月に港を接収し、他企業を暫定運営者として指名しながら新たな入札手続きを進める方針を示した。政府はこの措置が法に基づくものであり、パナマ運河の運営継続と雇用維持を優先したと説明している。
しかし、この動きは国内法争いにとどまらず、米中両国を巻き込む国際的な大国間競争の火種となっている。米国ではトランプ(Donald Trump)大統領が就任前から「中国がパナマ運河を支配している」と批判、共和党議員らは港の中国系企業による運営が安全保障上のリスクをもたらすと警鐘を鳴らしてきた。米国はパナマとの協議を通じ、港湾運営を透明かつ米国の戦略的利益に沿う形で再構築するよう働きかけてきたとされる。
一方で中国はパナマ政府の措置に強い不快感を示し、これを米国の「覇権主義的圧力」によるものだと非難している。中国側はパナマ当局が司法判断を尊重せず、自国企業への不当な干渉だと主張し、政治的・経済的な報復措置を示唆している。またPPCは国際仲裁手続きを開始し、15億ドルに上る損害賠償を求める意向を示している。
この問題はパナマ運河という世界貿易の要所を巡り、パナマ自身が国内法と国際政治との板挟みになる形で進行していることを浮き彫りにしている。パナマ政府は違憲判決を尊重すると同時に、新たなコンセッション契約を通じて運営の安定化を図る意向を示しているが、仲裁や外交交渉は長期化する見込みだ。米中の対立が激化するなかで、パナマ運河を巡る行方は今後の世界の物流と地政学的均衡にも影響を与えかねない状況となっている。
