ハイチ国連支援ミッション、活動開始から1年、ギャング暴力収まらず

ハイチはここ数十年の慢性的な政情不安、独裁政権、自然災害などにより、アメリカ大陸で最も貧しい国のひとつとなっている。2010年の大地震では20万人以上が死亡、その復興が進まぬ中、21年に地震が発生した。
2024年9月2日/ハイチ、首都ポルトープランス、ギャングを追跡する治安部隊(Getty Images)

ケニアが主導するハイチ国連支援ミッション(MSS)が作戦を開始してから1年が経過した。

ケニア国家警察の警察官400人は24年6月25日、ハイチの首都ポルトープランスに到着し、ハイチ国家警察と合流。現在も支援を続けている。

その後、ジャマイカ、ベリーズ、バハマ、グアテマラ、エルサルバドルから約1000人の兵士と警察官が参加し、規模が拡大した。

当初、MSSは国家警察と協力して秩序を回復できると期待されていたが、暴力は依然として収まる気配がない。

ハイチの治安は2021年7月のモイーズ(Jovenel Moise)大統領暗殺と同年8月に西部で発生したM7.2の大地震で崩壊し、破壊と暴力が蔓延している。

ポルトープランスでは3年ほど前から複数のギャングが地域の支配権をめぐって血みどろの抗争を繰り広げている。大統領のポストは今も空席のままだ。

ポルトープランスの90%がギャングの支配下に置かれ、市内の学校、企業、公共機関はほぼ全て閉鎖。2つの主要刑務所もギャングの攻撃で崩壊し、4000人以上の受刑者が脱獄した。

ポルトープランスと周辺地域の暴力は昨年10月頃から激化。アルティボニット県ではグラン・グリフとみられる武装ギャングが複数の地区を襲撃し、市民少なくとも115人を虐殺した。逮捕者は出ていない。

最新のギャング間抗争は3月初めに勃発。ポルトープランスの大部分を支配するギャング連合「ヴィヴ・アンサム(Viv Ansam)」と対立する複数のギャングが民間人を巻き込みながら激しい縄張り争いを繰り広げている。

国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)は今月、ギャングがポルトープランスを越えて中央地域に影響力を拡大していると警告。今年1月から5月末までの間に少なくとも2680人がギャング暴力で死亡し、130万人もの市民が避難を余儀なくされていると報告した。

専門家たちはMSSが何の成果も挙げられず、住民たちの不満が高まっていると指摘している。

MSSも犠牲者を出し、派遣以来、少なくとも2人の隊員が死亡、1人が負傷した。

地元メディアはMSSがギャングの攻撃で死者を出して以来、ポルトープランスの国際空港内にある基地にとどまり、屋外での活動を控えていると指摘している。

それによると、MSSは国家警察へのサポートに焦点を当てているという。

暫定大統領評議会のアルフォンス・ジャン(Fritz Alphonse Jean)議長は先週、ギャングとの戦いを有利に進めるため、外国の民間軍事会社を雇っていることを初めて認めた。

米国やカナダはMSSを平和維持部隊に格上げするよう求めているが、中国とロシアが難色を示している。

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