アフリカの若者たちが農業に活路を見出す、都市生活が高騰する中
アフリカではこれまで農業は低賃金・低地位の仕事とみなされ、若者は都市部でオフィスワークを求める傾向が強かった。
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アフリカ各地で都市部の生活費が高騰し、仕事の機会が限られる中、多くの若者が農業に活路を見いだしている。セネガル東部では、33歳の男性がピーナッツの苗を馬車に積み上げる姿が見られる。彼はかつて首都ダカールで教授を目指していたが、生活費の高さや求人の少なさから夢を断念し、故郷へ戻って農業を始めた。コロナ禍以降、企業の採用が減少し物価が上昇した影響で、都市での生活は困難になっていると男性は語っている。
アフリカではこれまで農業は低賃金・低地位の仕事とみなされ、若者は都市部でオフィスワークを求める傾向が強かった。しかし、最近では食料価格の高騰や灌漑(かんがい)への投資、新技術の導入により、農業が収益性のある職業へと変わりつつある。政府や国際機関、非政府組織が高度な農業技術の教育や機材、肥料、種子の提供を支援するプログラムを展開し、若い農業従事者を後押ししている。
男性は家族の農業経験を生かして、現在では32エーカー(約13ヘクタール)の農地でピーナッツやトウモロコシ、野菜、果物を栽培し、年に約200万CFA(約3500ドル)の利益を上げているという。これはセネガルの平均年収を上回る額であり、都市部の低賃金労働よりも魅力的だという。彼の父も最初は農業への復帰を否定的に見ていたが、明確な事業計画を示したことで支援に転じたという。
こうした動きはセネガルだけでなくガーナ、ナイジェリア、モザンビーク、ウガンダ、ルワンダ、ケニア、タンザニアなどでも見られ、国連世界食糧計画(WFP)は2023年から2027年初頭までに約38万人の若者が農業ビジネスを始める支援を行っている。特にセネガルでは6万1000人以上が支援を受け、その80%以上が農場を開設した。土地の所有権の複雑さや融資の難しさなど、若者が農業に参入する際の主な障壁を取り除くことが狙いだ。
WFPセネガル事務所は、若者が農業に参入するうえで土地や資金、実践的なスキル、市場の理解といった課題があると指摘する。また、セネガルは食料不安にも直面しており、気候変動や援助資金の削減が農業生産に影響を与えているという。こうした状況下で、若者が高付加価値作物への転換や新技術の活用に取り組むことで、生産量が増加し、地域の主要食料価格の低下にも寄与する可能性があると専門家は述べている。
農業はまた、欧州を目指す危険な移民ルートへの依存を軽減する役割も果たしている。セネガル政府は地方での雇用創出を図る一環として農業支援を強化しており、若者の国内定住を促進している。24歳の男性は、都市で建設作業員として苦労した後、鶏の飼育とピーマン栽培を始め、農業が自分の生活を救ったと語る。都市部での低賃金労働や過密な生活から離れ、農業に従事することで経済的・精神的な安定を得ているという。
このように、多くの若者が農業を新たな可能性として受け入れ、食料生産の強化や地域経済の活性化に貢献している。農業はかつて見向きもされなかった職業から、将来の雇用と持続可能な生活の柱へと変わりつつある。
