「自分の命は自分で守る」銃器訓練や武術を学ぶ女性たち 南アフリカ
首都プレトリア近郊では女性専用の射撃訓練が行われている。参加者は13歳の少女から65歳までと幅広く、9ミリ拳銃を用いた射撃の基本や、実際の襲撃を想定した姿勢での防御射撃などを学んでいる。
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南アフリカで深刻なジェンダー暴力被害が続く中、女性たちが銃器訓練や武術を学び、自ら身を守る動きが広がっている。警察や司法制度による保護が十分に機能していないとの不信感も背景にあり、女性たちが安全確保のために自衛手段を求める現状が浮き彫りになっている。
首都プレトリア近郊では女性専用の射撃訓練が行われている。参加者は13歳の少女から65歳までと幅広く、9ミリ拳銃を用いた射撃の基本や、実際の襲撃を想定した姿勢での防御射撃などを学んでいる。指導者は女性で、参加者は耳当てを着けながら標的に向けて射撃を繰り返す。訓練は暴力被害への不安を抱える女性が自信を取り戻すことを目的としている。
南アでは女性に対する暴力が深刻な社会問題となっている。UNウィメン(国連女性機関)によると、同国の女性殺害率(フェミサイド)は世界平均の5~6倍に達する。さらに、国内調査では18歳以上の女性の35%以上が生涯のうちに身体的または性的暴力を経験し、多くの場合、加害者は親密な関係にある男性だという。
こうした状況を受け、女性の間では武術による自己防衛の訓練も広がっている。最大都市ヨハネスブルクでは柔術などの護身術を学ぶ女性が増えているという。参加者は首を締められた場合の対処や壁際での拘束からの脱出方法など、攻撃から逃れるための技術を学んでいる。受講者の一人は「暴力が増える中、自分で身を守れることは重要だ」と話す。
銃器の所持は南アでも厳しく規制されており、自己防衛目的で銃を所有するには21歳以上で適性試験や身元確認を通過する必要がある。それでも銃器訓練に参加する女性は増え、家庭内侵入などの犯罪被害をきっかけに参加する人も少なくない。ある女性は自宅で強盗に縛られた経験から訓練を始め、「自信を取り戻すために必要だった」と語る。
一方、専門家は女性が自衛に頼らざるを得ない状況自体が社会の失敗を示していると指摘する。女性権利団体の関係者によると、南アではジェンダー暴力によって1日に約15人の女性が命を落としている。さらに、2021年に報告された強姦事件のうち有罪判決に至ったのは8%にとどまり、多くの事件が司法制度の中で処理されないまま終わっているという。
政府は女性や少女への暴力を国家的危機として対策を進めているが、避難施設の不足や警察の人員不足など、実効性を疑問視する声も多い。女性たちの間では「自分の命・安全は自分で守るしかない」という意識が広がり、射撃場や武術道場が新たな支え合いの場になっている。自衛訓練の広がりは南ア社会に根深く残る暴力の問題と、その解決の難しさを示している。
